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S行列 エスぎょうれつS matrix

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

S行列
エスぎょうれつ
S matrix

複数の数値の組で表わされた原因 (入力) と結果 (出力) を関係づける行列。散乱行列ともいう。回路網のインピーダンス行列や導波管の特性行列がその例。量子力学場の量子論の散乱 (または反応) 現象では,粒子が相互作用を始める前の状態と散乱後に粒子が互いに十分離れた状態との関係を与える演算子として,S 行列が定義される。行列要素 Sba の絶対値の2乗は始状態a から終状態b への遷移確率を表わし,測定可能な量である。始状態a の系は散乱後は,必ずなんらかの終状態になることから ΣbSba2=1 であり,すべての状態間の遷移を記述することから S 行列はユニタリ行列でなければならない。 S 行列要素と始状態のエネルギー・運動量との関係は因果律によって強い制限を受け,分散公式と呼ばれる関係が成立する。分散公式は直接観測可能な量の間に有用な関係を与える。 W.ハイゼンベルクは,場の量子論の発散の困難を避けるために,ラグランジュ関数ハミルトニアンを使わず,観測可能な S 行列のみから素粒子現象を記述する理論体系をつくるべきであると提案した。彼の主張は分散公式の研究によって部分的に達成されたものの,場の量子論に代るほど有効な理論にはなっていない。

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