ラグランジュ関数(読み)らぐらんじゅかんすう(英語表記)Lagrange's function

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラグランジュ関数」の意味・わかりやすい解説

ラグランジュ関数
らぐらんじゅかんすう
Lagrange's function

座標とその時間微分の関数で、ある物理系の力学的特性を表し、その運動を規定する量。フランスの物理学者・数学者ラグランジュが導入した。この関数に基づく運動方程式をラグランジュ方程式といい、その内容はニュートンの運動方程式と同等である。ラグランジュ関数をLとすると、系の運動エネルギーTとポテンシャルエネルギーUによりL=T-Uと定義される。Lと初期条件が与えられると系の全運動が記述されるので、これから出発する力学の形式をラグランジュ形式とよび、解析力学の基本的な体系となっている。

 ニュートン力学の場合のみならず、電磁場中での荷電粒子の運動や相対論の場合の運動方程式もラグランジュ形式に書くことができ、一般性の高い枠組みであると考えられる。自由度fの系の位置を一義的に定める一般化座標を(q1,q2,……,qf)とすると、Lはこの座標とその時間微分

および、より一般的には時間tによって表される。力学系の運動を与えるハミルトン原理はLの時間積分に対する変分原理で、一般化座標で変分を行うことにより次のラグランジュ方程式を得る。


これは一般化座標に対する運動方程式であり、その形は座標変換をしても変わらない。

永田 忍]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラグランジュ関数」の意味・わかりやすい解説

ラグランジュ関数
ラグランジュかんすう
Lagrange function

ラグランジアンともいう。ニュートン力学において保存力が働くとき,運動エネルギー T とポテンシャルエネルギー V との差 LTV で与えられる関数のこと。L一般座標 qi(i=1,2,…,f) と一般速度 との関数であって,これからラグランジュの運動方程式が導き出され,系の運動が決まる。したがって,ラグランジュ関数は力学系を規定する基本的な量である。連続体の力学,電磁場や一般の場に対しても L に相当する量を考えることができ,この量はラグランジュ関数密度と呼ばれる。

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