日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハミルトニアン」の意味・わかりやすい解説
ハミルトニアン
はみるとにあん
Hamiltonian
粒子や場のシステムのエネルギーを座標と運動量で表現したもの、および量子力学におけるエネルギー演算子をいう。後者はハミルトン演算子ともいわれる。ここで座標qは、対象としているシステムの運動を表すことができる限り任意に選んでよいが、運動量pはこれに応じて定まってくる。このような座標と運動量が特別の関係を有することをイギリスのW・R・ハミルトンがみいだした。この関係を正準共役(きょうやく)、この場合の座標と運動量を正準共役な力学変数という。先に述べたハミルトニアンとは、正準共役な力学変数でエネルギーを表現したものをハミルトンの名にちなんでよんでいるものである。したがって単振動を行う質量mの質点のハミルトニアンは(1/2m)p2+(1/2)Kq2(Kは力の定数)であるが、これを(m/2)(dq/dt)2+(K/2)q2と書けばハミルトニアンではない。
[田中 一]
量子力学のハミルトニアン
量子力学ではqとpとを演算子と考え、この間にqp-pq=-iħの関係が成り立つと考えている。p=-iħ∂/∂qはこの関係の具体的な一つの表現である。この結果、量子力学のハミルトニアンは古典力学のハミルトニアンのpを-iħ∂/∂qで置き換えた演算子Hとなり、量子力学の運動状態、すなわち量子的状態の時間的変化はiħ∂/∂t=Hで与えられる。
[田中 一]