甲状腺刺激ホルモンthyroid-stimulating hormoneまたはチロトロピンthyrotropinともいう。甲状腺の形態と機能の維持に最も重要な役割を果たしているホルモンである。脳下垂体前葉のβ細胞でつくられ,末梢血液中に分泌される。α鎖とβ鎖の2本からなる糖タンパク質で,分子量は2万8000と推定されている。TSHは甲状腺の濾胞(ろほう)上皮細胞の細胞膜上にあるTSH受容体に結合してアデニル酸シクラーゼを活性化し,環状AMPの産生を増すことによって甲状腺に作用する。TSHを投与すると次のような変化がみられる。すなわち,(1)甲状腺上皮細胞へのヨウ素イオンの取込みの増加,(2)甲状腺ホルモンの貯蔵型であるチログロブリンにおけるチロキシン(T4)とトリヨードチロニン(T3)の合成促進,(3)T4とT3の血液中への分泌の亢進が認められ,さらに,(4)甲状腺上皮細胞の成長と増殖も促される。TSHの分泌は,視床下部でつくられ脳下垂体まで運ばれてくるTSH放出ホルモン(TRH)によって刺激され,一方では,血液中の甲状腺ホルモン(T4とT3)濃度が上昇するとTSHの分泌は減少する。このようにしてTSHの分泌は,血液中の甲状腺ホルモン濃度を一定に保つように調節されている。
執筆者:葛谷 信明
TSH製剤としては,ウシ脳下垂体から抽出された注射剤がある。しかし,その精製度が高くないことと,作用が一過性なので,甲状腺機能低下症の治療には適さない。甲状腺機能低下の原因が甲状腺自身にあるのか,脳下垂体あるいはそれより上位の間脳部にあるのかという鑑別診断に利用される。一方,TRHはアミノ酸3個だけのペプチドで,合成も可能であり,合成類似体中には天然品より強い活性を示すものがある。TRHは脳下垂体TSH分泌予備能検査や,甲状腺機能低下症の原因が,脳下垂体によるものか,視床下部に基づくものかという診断に利用することができる。TRHは経口投与でも有効である。
→甲状腺機能検査
執筆者:川田 純
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…ストレスから体を守る働きをするホルモンで,動物がストレスに出会った場合,このホルモンの分泌が増加して副腎皮質ホルモンの分泌が盛んになる。(4)甲状腺刺激ホルモンthyroid‐stimulating hormone(TSH) 甲状腺に働いて甲状腺ホルモンの合成と分泌を促す作用をもつ。すなわち,このホルモンは,甲状腺でつくられ蓄えられているチログロブリン(サイログロブリン)が分解されて甲状腺ホルモンとして分泌されるのを促進する一方,甲状腺へのヨウ素の取込みを促し,新たにチログロブリンをつくる働きをする。…
※「TSH」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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