日本大百科全書(ニッポニカ) 「DJ」の意味・わかりやすい解説
DJ
でぃーじぇー
ディスク・ジョッキーdisk jockeyの略。ダンス・クラブやディスコでレコードを選択し、プレーする人。既成のレコードをただ流すだけに留まらず、しばしば複数のターンテーブルを同時に用い、ミックスやスクラッチなどの手法を用いて演奏する。またその延長線上で新たな音楽を制作することもあり、1980年代以降のクラブ・ミュージックにおける新たなミュージシャンとしての地位を獲得している。
1970年代のディスコ・ブームによって、クラブDJという存在がクローズ・アップされるようになった。ディスコ(90年代以降はクラブという呼び方が一般的になった)でのDJは通常2台のターンテーブルとミキサーを用い、次々に切れ目なくレコードを回し、時には2枚のレコードをミックスしたりリズム・ボックスなどの電子楽器を用いて、ダンスに適した音楽空間をつくり出す。1980年代に入るとDJ自らが音楽制作に乗り出すことも多くなり、ハウスやテクノ、ドラムンベースといったクラブ・ミュージックの諸ジャンルを生み出すことになる。
1970年代後半に誕生したヒップ・ホップでは、DJは旧来のミュージシャンと同様にレコードを演奏する。2枚の同じレコードの一部分を、2台のターンテーブルで繰り返しつなぎ一定のビートをつくり出したり(ブレイクビーツ)、ターンテーブルを手でこすり反転させて摩擦音をパーカッション的に用いたり(スクラッチ)などの技法を駆使し、ラップを行うMC(Master of Ceremonies)の伴奏を奏(かな)でる。90年代に入るとDJミュージックは自立し、ターンテーブリズムというジャンルを生み出すまでに至る。
なおジャマイカのポピュラー音楽、レゲエでは、ヒップ・ホップにおけるラッパーにあたる存在をDJと呼ぶので区別が必要である。
ラジオやミュージック・ビデオ番組でレコードを選択し、オンエアするDJについては項目「ディスク・ジョッキー」を参照。
[増田 聡]
『安斎直宗著『DJのための全知識』(1997・リットーミュージック)』▽『『アルティメイトDJ'Sファイル』(1998・Tokyo FM 出版)』▽『椹木野衣著『増補版 シミュレーショニズム――ハウス・ミュージックと盗用芸術』(ちくま学芸文庫)』