アカザ科の一・二年草。地ぎわに密生する根出葉は30~60cmの葉柄があり,卵形ないし長楕円形。2年目の夏に花茎を伸ばして,高さ80~120cmになる。雌雄異株で,黄緑色の小花が数個ずつ集まって,全体は大きな円錐花序をつくる。果実には金平糖状の突起があり,中に2~6個の種子が入っている。開花した株は夏の終りまでには枯死する。根は円錐形に肥大し太さ直径10~20cmとなり,両側面に縦列になってひげ根が出る。根の外皮の色は紅,黄,灰白色など。根を輪切りにすると,維管束が輪状に並び,それが柔組織を隔てて同心円状に配列している。この輪は根が生長するにつれて増え,冬までに8輪ほどになる。
ヨーロッパ南部地中海沿岸地方原産で,すでに紀元前から野生品が薬用として利用されたという。野菜としての利用はローマ時代からみられるが,17世紀ころからはヨーロッパ北部にも広まり,野菜および飼料用に普及した。現在ドイツ,フランス,デンマークなどに栽培が多い。日本には江戸時代初期に渡来したが,普及しなかった。現在おもに北海道で栽培されているが,これは明治以降あらためて導入した品種である。もともとビートの根はやや甘く,糖液が含まれるが,この糖含量を18世紀末からドイツで育種によって高めることによって作り出されたものがテンサイ(サトウダイコン)である。また,もっぱら葉を野菜として食べるために改良され変種に分化したものがフダンソウであり,根も地上部も真紅の特徴を野菜として賞用されて変種に独立したものがカエンサイであると考えられる。ビートの根は貯蔵して冬期間の家畜の多汁質飼料として利用され,地上部の葉も飼料とされる。北海道では4月下旬~5月に播種(はしゆ)するが,最近は育苗して移植する栽培法が普及している。収穫は10~11月。冷涼な気候を好むが,暖地でも栽培できる。カエンサイは根を輪切りにしてゆで,酢に浸すと濃い紅色になり,料理の彩りによい。甘みがありサラダに好まれる。
執筆者:星川 清親
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音響学用語としては、わずかに異なる振動数の二音が同時に鳴ったときに聞こえる「うなり」をいう。すなわち、異なる振動波の相互干渉によって生まれる振幅の周期的変化である。ピアノの調律や箏(こと)の調弦のときには、とくにこのビートを除去するように細心の注意を払う。しかし実際の演奏では、ジャズピアノのクラスター奏法や、箏の合せ爪(づめ)(押し手により隣接する二弦を同音にして同時に弾く)でビート効果が聞かれる例もある。三味線、琵琶(びわ)、ビーナのサワリはビートの複合効果とみることができる。また、バリ島のペニョロクという音理念のように、対(つい)になった金属鍵盤(けんばん)楽器を厳密にずらして調律し、ゆらめくような効果を初めから意図する文化もある。
拍と同義語としてのビートの場合、ジャズのダウンビート、アップビートや2(ツー)ビート(ラテンやディキシー)、4(フォー)ビート(スウィング)、8(エイト)ビート(ロック)、16ビート(新しいポップス)のように次々とつくりだされるリズム枠に対して使われる。
[山口 修]
サトウダイコンsugar beetの略称。また、サトウダイコンの原作物である飼料用ビートや、カエンサイtable beetもビートと称する。いずれも母種はBeta vulgaris L.(アカザ科〈APG分類:ヒユ科〉の二年草)である。
[星川清親 2021年2月17日]
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…1950年代のアメリカに起こったビート運動になんらかのかかわりをもった世代(ビートニクbeatnik)の総称。ビート運動は,抑圧的で非人間的な機能をもつ社会体制と,そこに安住しようとするスクエアsquareすなわち保守的で中産階級的な価値観とに反逆し,人間性の無条件な解放のために積極的に貧困に甘んじ,原始的なコミューン生活を行おうとする一種の生活運動である。…
…これを改善したテープをローノイズテープlow noise tapeという。 ビートbeat周波数がわずかに異なる二つの正弦波が重ね合わされたときに生ずる振幅の周期的変化で,うなりといって可聴帯域では二つの周波数の差の周波数の音として聞こえる。 VUメーターVU meterプログラム音のレベルを監視するための指示計器であり,聴感上の音量に近い指示をするように平均2乗形に近い特性をもつ。…
…サトウダイコン,ビートとも呼ばれる(イラスト)。サトウキビと並ぶ重要な糖料作物で,サトウキビの育たない温帯,冷涼地で栽培される。…
※「ビート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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