日本大百科全書(ニッポニカ) 「JCペニー」の意味・わかりやすい解説
JCペニー
じぇーしーぺにー
J.C. Penney Co., Inc.
アメリカの大手小売企業、百貨店(デパートメント・ストア)。
1902年ワイオミング州ケマラーの雑貨店(ドラッグストア)「ゴールデン・ルール・ストア」の責任者であったジェームズ・キャッシュ・ペニーJames Cash Penney(1875―1971)は、1903年に3店舗となった「ゴールデン・ルール・ストア」を譲り受けて独立、1913年に40店舗を超えたところで本社をユタ州に移し、現社名に変更して本格的な営業を開始した。翌1914年ニューヨークへ本社を移転。その後、既存の小売りチェーン・ストア(主として衣料品店)を買収、1925年に本格的なチェーン組織形態を導入した。それまでの支店経営として運営していた方式を改め、大型店舗を含めた既存店舗を整理・統合のうえ、チェーン・オペレーションを確立した結果、1930年代初頭には1400もの店舗を全国に展開するまでに企業規模を拡大していった。
[角田正博]
代表的な総合小売企業への躍進
1950年代に入ると郊外への人口移動が活発化し、住宅環境の変化とともに消費需要は拡大傾向をたどり始めた。当時、JCペニーが取り扱っていた商品の中心はハンカチや靴下、背広などといったソフトグッズであったために、急変する市場ニーズには対応できず苦戦を強いられた。そこでハードグッズ部門を強化すべく日用雑貨から台所用品、塗料、ホーム関連用品、そして自動車関連用品に至るすべての商品を低価格で取りそろえた、本格的な「フルラインストア」いわゆる総合小売業(general merchandise store、GSMともいう)への業態転換を図ったのである。さらに1960年代の郊外の大型ショッピング・センター化時代においては、ショッピング・センター内への積極的な出店攻勢を図る一方で、出遅れていたカタログ販売や保険事業、ディスカウント・ストア事業といった多角化路線へ乗り出した。「飽食の時代」といわれた1970年代には、高級化志向ニーズにこたえるべくプライベート・ブランド(自社開発製品。PBともいう)を主軸としたアップスケール(店舗を高級化してイメージを高めること)戦略を全店で展開して大きな成功を収め、シアーズ・ローバックと並んでアメリカ小売業を代表する総合小売企業へと躍進を遂げた。
[角田正博]
総合小売業態からデパートメント・ストアへ
しかし1970年代後半からの、消費者の価値観の多様化や女性の社会進出の増大に伴うライフスタイルの急変によって、最新のファッションと流行を求める消費者ニーズなどへの対応に乗り遅れ、一転して業績低迷への道を加速し始める。そしてついに1983年、ファッション重視のデザイナーズPB商品開発を軸にイメージアップを図るとともに、不採算部門の縮小または廃止を進めるなど大規模なリストラクチャリング(経営再構築)を行った。1987年には本社屋をニューヨークのマンハッタンからテキサス州ダラスの近郊にあるプラーノへと移転し、再起復活を求めてGMS業態からデパートメント・ストアへの再業態転換に挑戦した。1990年代からは、エッカードEckerdをはじめとする大手ドラッグストア・チェーンを買収して部門強化を図るとともに、カタログ販売事業、インターネットでの通信販売も拡充した。しかし、2004年にドラッグストア・チェーンのエッカード(約2700店舗)をアメリカのCVS Corp.とカナダのジャン・クテュ・グループJean Coutu Group PJC Inc.に売却した。
2010年1月時点の店舗数は1108店、従業員数約15万人。2008年度の売上高は184億8600万ドルで全米小売業ランキング第21位である。
[角田正博]