貧困線(読み)ヒンコンセン

デジタル大辞泉 「貧困線」の意味・読み・例文・類語

ひんこん‐せん【貧困線】

貧困ライン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貧困線」の意味・わかりやすい解説

貧困線
ひんこんせん

統計上、それに満たない所得では世帯の生活を維持できない境界線に当る所得を表す指標。19世紀末にイギリスの社会学者B・S・ロウントリイにより提唱された概念で、成人一人が1年間生活するのに最低限必要な食品・物品などの費用を積み上げて算出する。

 一方、「国民の等価可処分所得(世帯全体の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した数値)の中央値の半分の額」を貧困線ということもある。これは経済協力開発機構(OECD)が作成した基準で、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、日本の2012年(平成24)における貧困線(名目値)は 122万円(2009年は112万円)。貧困線に満たない所得水準の人口比率を示す「相対的貧困率」は 16.1%であった。日本の相対的貧困率は2000年15.3%、2003年14.9%、2006年15.7%、2009年16.0%、そして2012年16.1%と徐々に上昇している。2000年代なかばの時点で、OECD加盟国のなかではメキシコ、アメリカ、トルコに次いで4番目に相対的貧困率が高い。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貧困線」の意味・わかりやすい解説

貧困線
ひんこんせん
poverty line

肉体的能率を保持するための最小限度の生活水準。イギリスの社会学者 B.S.ロウントリーの提唱になるもので,彼は貧困線以下を第1次貧困,貧困線をわずかに上回る貧困を第2次貧困と呼んで区別した。実際に貧困線を導き出すために,彼は費目を,(1) 食物,(2) 家賃,(3) 家計雑費に区分し,食物では年齢,性別,労働の種類などに応じて家族の各人が必要とする量を決定し,その全体の経費を求めた。また家賃と家計雑費とは現実に支払われている金額を求め,(1) ~ (3) を合計して最小限度の生活費を得た。その後この概念は各国の研究者に利用され,計算方法も研究されてきた。現在では,低所得層の必要な食料費を栄養基準と家計調査に基づいて算定し,これをこの階層エンゲル係数の逆数倍することによって,健康にして文化的な国民生活の最低限という意味での貧困線として利用しており,社会福祉の対象を規定するうえに大きな役割を果している。

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世界大百科事典(旧版)内の貧困線の言及

【貧乏線】より

…最低生活を営むのに必要な所得の水準。貧困線と訳すこともある。イギリスのB.S.ラウントリーが貧困者数を統計的に推定するために提起した。…

※「貧困線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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