X線回折投影法(読み)エックスセンカイセツトウエイホウ

化学辞典 第2版 「X線回折投影法」の解説

X線回折投影法
エックスセンカイセツトウエイホウ
X-ray diffraction topography, X-ray diffraction microscopy

X線回折顕微法X線トポグラフィーともいう.X線回折を利用して結晶欠陥ひずみを直接観察する方法.半導体や強誘電体,強磁性体,金属などの結晶の研究に用いられる.電子顕微鏡に比べて分解能は落ちるが,比較的大きい結晶を調べられるという特長をもっている.ベルグ-バレット(Berg-Barrett)法では平行X線を試料表面に照射し,生じた回折線をできるだけ試料面に近接しておいた写真乾板上に記録する.表面層の欠陥が観察できるほか,試料の広い面積が一度に撮影できるのが特長である.ラング(Lang)法はさらに有用な方法で,試料の内部を調べることができる.微小X線源を用い,図の第一スリットの発散角を小さくし,Kα1 のみが回折できるように配置する.第二スリットの位置と幅を調整すれば試料の一定の層のみを撮影できる.さらに,この反射条件を満足させながら結晶と乾板を同じ相対位置でX線に対して往復運動させると,結晶の広い部分を1枚の写真で調べることができる.これは走査写真とよばれる.そのほかにも異常透過現象を利用する方法や,反射率の差を使う方法など数多くの方法が考案されている.近年は,写真法のかわりにX線テレビで直接観察する方法も用いられるようになってきた.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「X線回折投影法」の意味・わかりやすい解説

X線回折投影法
エックスせんかいせつとうえいほう
X-ray diffraction topography

X線の結晶による回折現象 (→X線回折 ) を用いて結晶の局所的な乱れを観察する方法で,X線回折顕微法ともいう。微小X線源から出た単色X線をスリットを通して試料に当て,特定の結晶格子面からの回折だけが生じるようにする。さらにX線フィルムとの間にスリットを置いて回折X線のみがフィルムに達するようにして,試料の広い範囲を調べられるように試料とフィルムを同時に徐々に動かす (ラングの方法) 。結晶格子に乱れがあると回折X線の強度が変り,コントラストが得られる。像の分解能は最高1μm程度なので,数の少い転位などの格子欠陥の観察に適している。像の記録には,通常は微粒子で膜の厚い乳剤をもつ原子核乾板が用いられる。

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