乾板(読み)カンパン(その他表記)dry plate

デジタル大辞泉 「乾板」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぱん【乾板】

写真感光板の一。ガラス板感光乳剤を薄く塗って乾かしたもの。暗箱あんばこに入れて用いる。写真乾板。→湿板しっぱん

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精選版 日本国語大辞典 「乾板」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぱん【乾板】

  1. 〘 名詞 〙 ガラス板に写真乳剤を塗って乾燥させた感光材料。暗箱カメラによる撮影に用いる。写真乾板。
    1. [初出の実例]「写真器械〈略〉印画用紙 乾板台紙 諸薬品類 材料一式」(出典:風俗画報‐二〇五号(1900)広告)

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改訂新版 世界大百科事典 「乾板」の意味・わかりやすい解説

乾板 (かんぱん)
dry plate

写真乾板photographic plateともいう。ガラス板を支持体としてその表面に写真乳剤塗布,乾燥させた写真感光材料。1871年イギリスのR.L.マドックスが初めて作った。処理による寸法変化がきわめて少ないので,写真像の正確な大きさや高い解像力が必要な科学用および工業用に使われる。一般撮影用としては現在ではほとんど使われない。代表的なものとして以下のようなものがある。

(1)分光写真用乾板 分光スペクトル写真用の乾板で,紫外,可視および赤外線(1200nmまで)など,種々の波長域用のものがある。遠紫外線用にはゼラチンをごく少量用いたシューマン乾板,または蛍光液をオーバーコートした乾板を使う。赤外線用のものは使用期限が短く保存に注意が必要で,とくに1200nm用のものは,使用数時間前に赤外線感度を付与する処理を行って使用する。

(2)高解像力乾板 直径0.1μm以下の超微粒子ハロゲン化銀乳剤を用い,1mm当り1000本以上の解像力をもつ。おもな用途エレクトロニクスのIC基盤の製造とホログラフィー用である。前者の場合,回路図の縮小からウェーハへの焼付けまで各工程で使われ,解像力が高いこと,ごみが少なく傷がつきにくいことが必要。

(3)原子核乾板 宇宙線や加速器実験において荷電粒子の飛跡を記録するもの。飛跡を正確にとらえるために,ふつうの感光材料とくらべてハロゲン化銀粒子のゼラチンに対する比率が高く(重量比で8:2くらい),乳剤層の膜厚も50~600μmと厚い

(4)オートラジオグラフィー用乾板 オートラジオグラフィーにおいてトレーサーとして用いられる放射性同位元素の分布を検出するのに使われる。マクロオートラジオグラフィーではふつうのX線フィルムなどが用いられるが,顕微鏡観察を行うミクロオートラジオグラフィーでは原子核乳剤を塗布した専用乾板を使う。被検体と乳剤層の密着をよくして解像力を高めるために支持体から乳剤層をはがすことができるストリッピング型と通常のコンタクト型がある。
原子核乾板
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化学辞典 第2版 「乾板」の解説

乾板
カンパン
photographic plate

ガラス板上に写真乳剤を塗布したものをいう.伸縮が少ないので精度を要求する用途に用いられる.素粒子,宇宙線などの研究に用いられ,荷電粒子の飛跡を精密に検出する原子核乾板([別用語参照]原子核乳剤),集積回路の製作やホログラム記録に用いられる超高解像力乾板,分光分析用乾板などがある.用途に応じた精度で研磨したガラスに,硬膜処理したゼラチン下引き層を介して乳剤を塗布する.

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百科事典マイペディア 「乾板」の意味・わかりやすい解説

乾板【かんぱん】

平面性のよいガラス板に写真乳剤を塗布,乾燥した感光材料。重く,かさばり,割れやすいため,フィルムにとって代わられ,寸法安定性が要求される科学用写真などの特殊な用途があるにすぎない。コロジオン湿板(湿板写真)に対する名称。
→関連項目感光材料写真

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乾板」の意味・わかりやすい解説

乾板
かんぱん
dry plate

透明ガラス板に写真乳剤を塗布,乾燥させた写真感光材料の一種。ゼラチン乾板は,1871年イギリスの R.L.マドックス (1816~1902) が発明した。乳剤の湿潤中に撮影し,乾燥すると感度を失う湿板に対し,乾燥後も撮影が可能なので乾板と呼んだ。現在は精密科学用,電子工業用などを除くとほとんどがフィルムに置き換えられ,姿を消した。

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