写真乾板photographic plateともいう。ガラス板を支持体としてその表面に写真乳剤を塗布,乾燥させた写真感光材料。1871年イギリスのR.L.マドックスが初めて作った。処理による寸法変化がきわめて少ないので,写真像の正確な大きさや高い解像力が必要な科学用および工業用に使われる。一般撮影用としては現在ではほとんど使われない。代表的なものとして以下のようなものがある。
(1)分光写真用乾板 分光スペクトル写真用の乾板で,紫外,可視および赤外線(1200nmまで)など,種々の波長域用のものがある。遠紫外線用にはゼラチンをごく少量用いたシューマン乾板,または蛍光液をオーバーコートした乾板を使う。赤外線用のものは使用期限が短く保存に注意が必要で,とくに1200nm用のものは,使用数時間前に赤外線感度を付与する処理を行って使用する。
(2)高解像力乾板 直径0.1μm以下の超微粒子ハロゲン化銀乳剤を用い,1mm当り1000本以上の解像力をもつ。おもな用途はエレクトロニクスのIC基盤の製造とホログラフィー用である。前者の場合,回路図の縮小からウェーハへの焼付けまで各工程で使われ,解像力が高いこと,ごみが少なく傷がつきにくいことが必要。
(3)原子核乾板 宇宙線や加速器実験において荷電粒子の飛跡を記録するもの。飛跡を正確にとらえるために,ふつうの感光材料とくらべてハロゲン化銀粒子のゼラチンに対する比率が高く(重量比で8:2くらい),乳剤層の膜厚も50~600μmと厚い。
(4)オートラジオグラフィー用乾板 オートラジオグラフィーにおいてトレーサーとして用いられる放射性同位元素の分布を検出するのに使われる。マクロオートラジオグラフィーではふつうのX線フィルムなどが用いられるが,顕微鏡観察を行うミクロオートラジオグラフィーでは原子核乳剤を塗布した専用乾板を使う。被検体と乳剤層の密着をよくして解像力を高めるために支持体から乳剤層をはがすことができるストリッピング型と通常のコンタクト型がある。
→原子核乾板
執筆者:山田 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ガラス板上に写真乳剤を塗布したものをいう.伸縮が少ないので精度を要求する用途に用いられる.素粒子,宇宙線などの研究に用いられ,荷電粒子の飛跡を精密に検出する原子核乾板([別用語参照]原子核乳剤),集積回路の製作やホログラム記録に用いられる超高解像力乾板,分光分析用乾板などがある.用途に応じた精度で研磨したガラスに,硬膜処理したゼラチン下引き層を介して乳剤を塗布する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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