改訂新版 世界大百科事典 「ラシェル」の意味・わかりやすい解説
ラシェル
Rachel
生没年:1821-58
フランスの悲劇女優。本名Elisabeth Felix。ユダヤ人行商人の娘として極貧の内に育ち,10歳のおり認められて音楽学校入学。演劇に転向,コンセルバトアールを経て17歳でコメディ・フランセーズに入る。38年コルネイユ作《オラース》のカミーユ役でデビューするや圧倒的人気を得,閑古鳥の鳴く一座の救世主となる。ラシーヌ作《フェードル》の女主人公,《アンドロマック》のエルミオーヌなど古典悲劇に卓越し,ロマン派には理解を示さなかった。悲愴感あふれる高貴な容貌,繊細な姿に似ぬ豊かな朗誦力で全欧に名をとどろかす。ロシア,イギリスはじめ各国に巡演。55年アメリカで健康を損ね南フランスに引退。《書簡集》を残す。
執筆者:鈴木 康司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報