狐塚(読み)キツネヅカ

デジタル大辞泉 「狐塚」の意味・読み・例文・類語

きつねづか【狐塚】[狂言]

狂言。田へ鳥追いにやらされた太郎冠者が、夜になって臆病になり、見舞いに来た主人次郎冠者を狐と思い込んで縛る。

きつね‐づか【×狐塚】

狐のすむ穴。
[補説]狂言の曲名別項。→狐塚

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精選版 日本国語大辞典 「狐塚」の意味・読み・例文・類語

きつね‐づか【狐塚】

[1] 〘名〙 狐のすむ丘。そこから固有名詞化されて地名になっている場合が多い。
※虎明本狂言・狐塚(室町末‐近世初)「あそこはきつねづかと云て」
[2] 狂言。各流。狐塚の田の鳥追いに来た太郎冠者が、あとから来た次郎冠者と主(あるじ)を狐が化けたものと思い、青松葉をいぶして苦しめるという筋。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「狐塚」の意味・わかりやすい解説

狐塚
きつねづか

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人に命じられ狐塚の田へやってきた太郎冠者(シテ)と次郎冠者が鳴子(なるこ)を振って群がる鳥を追っているところへ、主人が酒を持って慰労にくる。ところが、付近に悪い狐が出ると聞いてきた2人は、狐の化身と思い込み、いぶした青松葉鼻先に突きつけて正体を現せと迫り、さらに鳴子縄で縛りあげるが、真の主人とわかり逃げて行く。以上は大蔵流の筋で、和泉(いずみ)流では、1人で鳥追いに行った太郎冠者が順次に見舞いにくる次郎冠者と主人を次々に縛って松葉でいぶすが、縄を解いた2人に仕返しされる、という内容。大蔵流の特殊演出「小唄入(こうたいり)」では鳥を追う箇所に長い小歌が入り、和泉流狂言『鳴子』に似てくる。狐塚はいまも各地に残る地名で、農村的土臭さの漂うのが特色であり、冠者の疑心暗鬼が見どころ。

[小林 責]

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世界大百科事典(旧版)内の狐塚の言及

【稲荷信仰】より

…稲荷信仰の全国的普及は,おもに伏見稲荷をはじめとする宗教家の解説や宣伝によるものであり,一方ではそれを受容する民俗的な基盤もあった。その受容の基盤として,田の神およびその〈使女(つかわしめ)〉を狐とする信仰を指摘することができ,各地にみられる狐塚は本来田の神の祭場であったとされている。また稲荷と狐とを同一視する観念も支配的で,狐の鳴き方や食べ方で豊凶を占うことも少なくない。…

【塚】より

…一方,祭りのために祭壇を築く習俗は古くから行われていた。十三塚は,真言系の僧,修験,行者が野外で修法を修めた場所であったことが明らかにされ,狐塚という名称をもつ塚も,本来は田の神の祭場であり,田の神の使わしめが狐であるとする信仰や,祭場にしばしば狐が出没したところから狐塚の名称が起こったとされる。祭りのために塚を築く習俗は,平地よりも一段と高い場所を祭場に当てようとする心意の表れであり,神木や高い竿・鉾を用いて神の依代(よりしろ)とする習俗と同じ心意といえる。…

※「狐塚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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