宮城県北部、玉造郡(たまつくりぐん)にあった旧町名(鳴子町(ちょう))。現在は大崎(おおさき)市の北西端を占める地域。旧町名は「なるこ」と読むが、地名は「なるご」とも読む。1921年(大正10)温泉村が鳴子町と川渡(かわたび)村に分離。1954年(昭和29)鳴子町と川渡、鬼首(おにこうべ)の2村が合併。2006年(平成18)古川市(ふるかわし)、志田(しだ)郡松山町(まつやままち)、三本木町(さんぼんぎちょう)、鹿島台町(かしまだいまち)、玉造郡岩出山町(いわでやままち)、遠田(とおだ)郡田尻町(たじりちょう)と合併して、大崎市となった。奥羽山脈を境にして西は山形県、北は秋田県に接し、荒雄川(あらおがわ)(江合(えあい)川)上流域を占める。古くからの交通の要地で、JR陸羽東線、国道47号(北羽前街道)、108号(羽後街道)などが通じる。近世は銅の採鉱や馬産地として知られた。荒雄川に沿って上流に鬼首温泉郷、その下流に鳴子温泉郷があり、温泉地としての開発が進んでいる。尿前関(しとまえのせき)跡、芭蕉(ばしょう)の句碑のある鳴子公園、上野々(うえのの)・花淵(はなぶち)山や鬼首高原のスキー場、鳴子ダムとそれに伴う荒雄湖、荒雄川の支流大谷(おおや)川に約6キロメートル峡谷美の続く鳴子峡などがあり、栗駒国定公園域となっている。鳴子こけしの産地で、約5000本のこけしと資料を展示した日本こけし館があり、8月には全国こけし祭が行われる。宮城伝統こけしとして、鳴子漆器とともに国の伝統的工芸品に指定される。
[境田清隆]
『『鳴子町史』(1974・鳴子町)』
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。和泉(いずみ)流だけの曲。田を荒らす群鳥(むらとり)を追いに行くよう主人に命じられた太郎冠者(シテ)と次郎冠者は、山の田に着き、鳴子縄を稲木(いなぎ)(ワキ柱と目付(めつけ)柱)に結び、「ホウ、ホウ」と掛け声をかけながら鳴子を打ち鳴らす。そこへ主人が酒樽(さかだる)を持って慰労にき、日が暮れたら戻れといって帰る。さっそく酒宴を始めた2人は、小歌をうたい、鳴子を引きながら舞い興じるうちに寝込んでしまう。あまり帰りが遅いので迎えにきた主人が2人の酔態をみつけ、揺り起こして追い込む。鳴子を打ち鳴らしながら2人がうたう、引くもの尽しや名所尽しの謡を聞くうちに、舞台いっぱいに実り豊かな田園風景が広がる、叙情味たっぷりの秋の名曲。
[油谷光雄]
農作物を荒らす鳥を、音響で追う仕掛け。かかしの一種。小さな竹筒を数本板にぶら下げ、それに綱をつけ田の中に設置しておく。鳥がくるとその綱を引いてカタコトと音をさせ鳥を追い払う。これをヒタ、トリオドシ、ガラガラなどという。同じ仕掛けのものをナルサオといって竿(さお)につけたものもある。これは人が手に持って鳥を追うものである。古く『更級(さらしな)日記』に「田といふもののひた引き鳴らす音など」と書かれている。
[大藤時彦]
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大きな音を立てて鳥獣を驚かしこれを追い払う道具。おもに農作の害となる鳥獣を防除するために用いられるが,防犯用として用いられることもある。小さな板に竹管などを紐で添え,綱にこれを多数取り付けておく。農家ではおもに子どもや老人がこの綱の一端を引いてこれを鳴らす役目にあたる。金属器を用いた鳴子もある。竹筒などで水を引き入れたり,流水を利用して音を立てる〈ばったり〉〈ししおどし〉も鳴子の一種といえる。
→案山子(かかし)
執筆者:大島 暁雄
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…その発達した例が,トーキング・ドラムである。その他,鹿笛のように動物をおびきよせる道具,あるいはその逆に,害鳥を追い払うために田畑に置く鳴子などは,狩猟や農耕など人間の生業活動と結びついている。 このように,一般的用法における楽器の社会的機能には,神性,権力などの象徴機能,伝達などの言語代理機能,生業用具としての実用機能などがある。…
※「鳴子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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