鳴子(読み)ナルコ

デジタル大辞泉 「鳴子」の意味・読み・例文・類語

なる‐こ【鳴子】

田畑が鳥獣に荒らされるのを防ぐための仕掛け。横板に数本の竹片をぶら下げたものを縄に掛け連ね、縄を引くと音が鳴るようにしたもの。ひきいた。 秋》「引かで鳴る夜の―の淋しさよ/漱石
1に似せて作った打楽器。持ち手をつけた板に木片を取り付け、振って打ち鳴らす。高知県よさこい祭などで使われる。

なるこ【鳴子】[狂言]

狂言。和泉いずみ太郎冠者次郎冠者が、山田へ鳥追いに来て、主人が持ってきてくれた酒を飲み、鳴子を引きながら歌い舞ううちに酔って寝てしまう。

なるこ【鳴子】[地名]

宮城県大崎市の地名。温泉地。鳴子こけし・鳴子塗の産地。荒雄川支流の大谷川鳴子なるごがある。

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精選版 日本国語大辞典 「鳴子」の意味・読み・例文・類語

なる‐こ【鳴子】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 田畑が鳥獣に荒らされるのを防ぐためのしかけ。短い竹筒を小さな板に掛け連ね、その板に縄を張ったり、竹ざおの先につけ綱をつけたりして、遠くから縄や綱を引いて鳴らすもの。ひきいた。ひた。《 季語・秋 》
      1. 鳴子<b>[ 一 ]</b><b>①</b>〈風俗図屏風〉
        鳴子[ 一 ]〈風俗図屏風〉
      2. [初出の実例]「夕まぐれ遠の山田をもる人もいなおほせ鳥になるこ引めり」(出典:林葉集(1178)秋)
    2. に似せて小さい板に竹筒や鈴などをつるし、綱を引くと鳴るしかけの、人を呼んだり合図を送ったりするもの。
      1. [初出の実例]「隠居から鳴子を引けばたばこ盆」(出典:雑俳・たからの市(1705))
    3. 江戸、深川の岡場所で、舟着き場に置いて、客を乗せた舟が着くと茶屋へ合図のために鳴らしたもの。
      1. [初出の実例]「鳴子(ナルコ)の音に神(しん)を飛し、一切(ひときり)遊びは対面の三方のごとく扱れ」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)自叙)
    4. なるこうり(成子瓜)」の略。
      1. [初出の実例]「立て島の揃ひでなるこ江戸へ出る」(出典:雑俳・柳多留‐九九(1828))
  2. [ 2 ] 狂言。和泉・鷺流。山田に鳥追いに来た太郎冠者・次郎冠者は、主人が持ってきてくれた酒を飲み、鳴子を引いては小歌をうたうが、間もなく酔って寝込んでしまう。江戸初期、「大蔵虎明本」に見られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳴子」の意味・わかりやすい解説

鳴子(宮城県の旧町名)
なるこ

宮城県北部、玉造郡(たまつくりぐん)にあった旧町名(鳴子町(ちょう))。現在は大崎(おおさき)市の北西端を占める地域。旧町名は「なるこ」と読むが、地名は「なるご」とも読む。1921年(大正10)温泉村が鳴子町と川渡(かわたび)村に分離。1954年(昭和29)鳴子町と川渡、鬼首(おにこうべ)の2村が合併。2006年(平成18)古川市(ふるかわし)、志田(しだ)郡松山町(まつやままち)、三本木町(さんぼんぎちょう)、鹿島台町(かしまだいまち)、玉造郡岩出山町(いわでやままち)、遠田(とおだ)郡田尻町(たじりちょう)と合併して、大崎市となった。奥羽山脈を境にして西は山形県、北は秋田県に接し、荒雄川(あらおがわ)(江合(えあい)川)上流域を占める。古くからの交通の要地で、JR陸羽東線、国道47号(北羽前街道)、108号(羽後街道)などが通じる。近世は銅の採鉱や馬産地として知られた。荒雄川に沿って上流に鬼首温泉郷、その下流鳴子温泉郷があり、温泉地としての開発が進んでいる。尿前関(しとまえのせき)跡、芭蕉(ばしょう)の句碑のある鳴子公園、上野々(うえのの)・花淵(はなぶち)山や鬼首高原のスキー場、鳴子ダムとそれに伴う荒雄湖、荒雄川の支流大谷(おおや)川に約6キロメートル峡谷美の続く鳴子峡などがあり、栗駒国定公園域となっている。鳴子こけしの産地で、約5000本のこけしと資料を展示した日本こけし館があり、8月には全国こけし祭が行われる。宮城伝統こけしとして、鳴子漆器とともに国の伝統的工芸品に指定される。

[境田清隆]

『『鳴子町史』(1974・鳴子町)』



鳴子(狂言)
なるこ

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。和泉(いずみ)流だけの曲。田を荒らす群鳥(むらとり)を追いに行くよう主人に命じられた太郎冠者(シテ)と次郎冠者は、山の田に着き、鳴子縄を稲木(いなぎ)(ワキ柱と目付(めつけ)柱)に結び、「ホウ、ホウ」と掛け声をかけながら鳴子を打ち鳴らす。そこへ主人が酒樽(さかだる)を持って慰労にき、日が暮れたら戻れといって帰る。さっそく酒宴を始めた2人は、小歌をうたい、鳴子を引きながら舞い興じるうちに寝込んでしまう。あまり帰りが遅いので迎えにきた主人が2人の酔態をみつけ、揺り起こして追い込む。鳴子を打ち鳴らしながら2人がうたう、引くもの尽しや名所尽しの謡を聞くうちに、舞台いっぱいに実り豊かな田園風景が広がる、叙情味たっぷりの秋の名曲。

[油谷光雄]


鳴子(農業)
なるこ

農作物を荒らす鳥を、音響で追う仕掛け。かかしの一種。小さな竹筒を数本板にぶら下げ、それに綱をつけ田の中に設置しておく。鳥がくるとその綱を引いてカタコトと音をさせ鳥を追い払う。これをヒタ、トリオドシ、ガラガラなどという。同じ仕掛けのものをナルサオといって竿(さお)につけたものもある。これは人が手に持って鳥を追うものである。古く『更級(さらしな)日記』に「田といふもののひた引き鳴らす音など」と書かれている。

[大藤時彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳴子」の意味・わかりやすい解説

鳴子
なるこ

宮城県北西部,大崎市北西部の旧町域。江合川の上流,荒雄川流域に位置する。山形県,秋田県に接する。 1921年町制。 1954年川渡村,鬼首村と合体。 2006年古川市,松山町,三本木町,鹿島台町,岩出山町,田尻町の1市5町と合体して大崎市となった。東北地方の代表的温泉町で,荒雄岳南麓,荒雄川周辺に分布する鬼首温泉郷鳴子温泉郷がある。鳴子ダム,鳴子峡,尿前の関跡 (しとまえのせきあと) ,荒雄湖,鳴子スキー場,花淵山スキー場など1年を通じての観光地。大半が山林原野で,農林業が行なわれる。特産はこけしと漆器。中央から西部一帯は栗駒国定公園に属する。

鳴子
なるこ

田畑の作物を荒す鳥を追払うためのおどし具。小さい板に細い竹管を糸で吊り並べたもの。長い縄の中途に掛けて田畑に張り,一端を引張ることで音が出る仕掛けになっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「鳴子」の意味・わかりやすい解説

鳴子 (なるこ)

大きな音を立てて鳥獣を驚かしこれを追い払う道具。おもに農作の害となる鳥獣を防除するために用いられるが,防犯用として用いられることもある。小さな板に竹管などを紐で添え,綱にこれを多数取り付けておく。農家ではおもに子どもや老人がこの綱の一端を引いてこれを鳴らす役目にあたる。金属器を用いた鳴子もある。竹筒などで水を引き入れたり,流水を利用して音を立てる〈ばったり〉〈ししおどし〉も鳴子の一種といえる。
案山子(かかし)
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鳴子(旧町) (なるこ)

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世界大百科事典(旧版)内の鳴子の言及

【楽器】より

…その発達した例が,トーキング・ドラムである。その他,鹿笛のように動物をおびきよせる道具,あるいはその逆に,害鳥を追い払うために田畑に置く鳴子などは,狩猟や農耕など人間の生業活動と結びついている。 このように,一般的用法における楽器の社会的機能には,神性,権力などの象徴機能,伝達などの言語代理機能,生業用具としての実用機能などがある。…

※「鳴子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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