日本大百科全書(ニッポニカ) 「部落差別解消法」の意味・わかりやすい解説
部落差別解消法
ぶらくさべつかいしょうほう
部落差別を解消するため、国や自治体の責務を明記した理念法。「部落差別」ということばのついた初の法律(全6条)である。2016年(平成28)12月に成立、施行された。正式名称は「部落差別の解消の推進に関する法律」(平成28年法律第109号)で、「部落差別解消推進法」ともいわれる。自由民主党、公明党、民進党が共同提案した議員立法で、理念法のため、罰則規定はなく、財政的な裏づけもない。同法は、インターネット上に同和地区の地名リストが掲示されるなど「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ」、部落差別のない社会を実現することを目的とする。部落差別解消のための国・自治体の責務として、情報提供、指導・助言、相談体制の充実、教育・啓発、実態調査などを明記した。「過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずる」「教育及び啓発により新たな差別を生むことがないように留意」との付帯決議がついている。
日本政府は第二次世界大戦後、部落差別の解消を「国の責務で国民的課題」と位置づけ、1969年(昭和44)に特別法(同和対策事業特別措置法)を制定し住宅環境の改善などの財政支援に取り組んできた。しかし民間運動団体の行き過ぎや、報道機関の表現の自己規制など行き過ぎた動きもあり、特別法は2002年に失効している。
[矢野 武 2017年6月20日]