パルス幅変調制御(読み)ぱるすはばへんちょうせいぎょ(英語表記)pulse width modulation control

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルス幅変調制御」の意味・わかりやすい解説

パルス幅変調制御
ぱるすはばへんちょうせいぎょ
pulse width modulation control

パルスの高さ(振幅)を一定にし、パルス幅を変化させて制御する方式。英語の頭文字から、PWM制御ともよばれる。連続したパルス列の各パルスをオンオフする時間比率を調節することにより制御を行う。この時間比率をパルスのデューティ比という。パルス幅変調は本来、通信の変調に使われた方式である。パワーエレクトロニクスの発展とともに広く使われるようになった。パワーエレクトロニクスの制御では、PWM制御により出力電圧または電流を調節する。PWM制御では出力すべき信号波よりも周波数が高い搬送波とよばれる繰り返しパルス列を用いる。

 直流電力を変換するチョッパでもデューティ比を制御して出力を調節する。これもPWM制御の一種と考えられるが、パルス幅は出力を決めるだけである。したがって、直流の場合、チョッパ制御とよばれることが多い。PWM制御とよぶのは、正弦波を近似する交流出力の場合が多い。

 交流出力の場合、出力電圧に対応したデューティ比が一定のパルス列を出力するものもPWM制御とよばれることがある。しかし、出力波形を正弦波に近似するようにパルス幅を順次変更し、パルス幅の平均が望みの出力に対応するデューティ比になるように制御することをPWM制御とよぶ場合が多い。これをとくに正弦波PWM制御とよぶ場合もある。

 正弦波に近似する場合、望みの振幅、周期の正弦波を信号波とし、搬送波は周波数の高い三角波とする。アナログ的には、この二つの波形の交点ごとにパルスをオンオフさせてPWM波形を合成できる。出力波形の搬送波成分を減衰できるローパスフィルターを通せば、もとの信号波である正弦波を再現できる。

 パワーエレクトロニクスの場合、出力には電動機や変圧器などのインダクタンスをもつ負荷が接続されていることが多い。そのため、電圧を高速にPWM制御してもインダクタンスによる過渡現象で電流の変化が抑えられるので、ローパスフィルターがなくても電流波形は正弦波に近くなる。

 三相交流を出力する場合、信号波として120度位相の異なる三つの正弦波を用いればよい。なお、PWM制御方式に対応して、パルスの振幅を変化させるパルス振幅変調PAMpulse amplitude modulation)制御という制御方式がある。この場合、出力波形は矩形波(くけいは)なので正弦波に近似はしていない。インバーター回路のほかに直流電源可変のための直流‐直流変換回路などが必要となる。PAM制御は6回のスイッチングで交流電圧の1周期が出力できるので6ステップ波形とよばれることがある。

 なお、PAM制御とPWM制御を併用して、正弦波に近似させて、しかも振幅を制御する場合もある。

[森本雅之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例