佐藤藤右衛門(読み)さとう・とうえもん

朝日日本歴史人物事典 「佐藤藤右衛門」の解説

佐藤藤右衛門

没年:安政6.1.12(1859.2.14)
生年天明3(1783)
幕末の篤農家,ウンカ(浮塵子)類の注油駆除法の実験者。筑前国(福岡県)夜須郡曾根田村生まれ。名は久真。8代目藤右衛門を名乗る。父藤市のあとを継ぎ曾根田村,三牟田村庄屋を勤め,退役後は甘木村の入庄屋となる。天保13~15(1842~44)年,水苗代に油(菜種油,鯨油)を注いでウンカ類の駆除試験を行い,『蝗除試仕法書』(1845)を著し,近隣地域の指導者層や篤農家に回文した。なお「蝗」はイナムシと訓じ,ウンカを主とする稲の害虫総称である。本書は近年活字化され,先駆的な実験報告書として高い評価を受けている。また,畏敬する同郷の儒者貝原益軒の『君子訓』全3巻を初めて上木し,諸方に献呈した。<参考文献>小西正泰・安川巌「『蝗除試仕法書』解題」(『日本農書全集』31巻)

(小西正泰)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「佐藤藤右衛門」の解説

佐藤藤右衛門 さとう-とうえもん

1783-1859 江戸時代後期の農民
天明3年生まれ。筑前(ちくぜん)(福岡県)夜須(やす)郡曾根田村,三牟田村の庄屋。苗代への注油によるウンカ類の駆除法を実験的に研究し,弘化(こうか)2年「蝗(こう)除試仕法書」をあらわした。安政6年1月12日死去。77歳。名は久真。

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