割山(読み)わりやま

精選版 日本国語大辞典 「割山」の意味・読み・例文・類語

わり‐やま【割山】

〘名〙 入会山を入会権者各戸に一定期間分割して利用させること。
※河村嘉左衛門申渡書‐正徳五年(1715)「彌四郎納得仕山挊(やまかせぎ)可致候、割山の儀曾て不罷成候事」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「割山」の意味・わかりやすい解説

割山 (わりやま)

山割りとも山分けともいう。一定林野の木草を共同的に採取する入会山(いりあいやま)を,有権者個々に区分または分割することであるが,農地の〈地割〉と同じように,(1)所定の利用期間が過ぎると山の割替えを行う時限方法と,(2)入会山を有権者各自に永久分割する山分け方法とに大別される。ともに木草を採取するうえの不均衡を是正し,その均分化を図る手段であるが,人口増に伴う農地開発が進むにつれて,入会地は一般に縮小するのに対し,入会採取物(肥・飼料の草や薪炭材など)への需要は反対に増大するところから,いきおい木草の濫採と競合を生じがちになる。これが入会紛争に発展する傾向が近世中期以降とくにいちじるしくなるため,この争因を除く手段として,入会権者各自の持分を定めると同時に,他の持分を侵犯しないこと,および非入会権者に持分を売買または譲渡しないことを誓約させるのを通例とした。しかし割山の施行には,各戸の公租・公課負担の軽重を考勘して配分を決定する場合が多かったから,割山配分が平均化するのは小農の自立性が強まる後年になってからである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「割山」の意味・わかりやすい解説

割山
わりやま

江戸時代に起り,多くは明治になって発達した山林原野の用益制度。山分け,分け山ともいう。入会林野入会権者に分割,配分し,一定期間は被配分者の占有にゆだね,期限がくると再び割替 (→地割 ) を行なった。乱伐防止,用益上の不均衡是正などを目的とし,分割方法は入会権者の所持石高に比例して配分する高割と,入会権者に均分する家割とがあった。割替期限は5,10,15年程度が普通であるが,なかには 25年以上の長期,あるいは不定期のものもあった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の割山の言及

【村中入会】より

…やがてその利用権が株,札で表示されるようになると,入会地利用の権利が高請地を離れて売買の対象になる。林産物の商品化,耕地(高請地)での販売用作物の栽培,それにともなう購入肥料の利用などが進むと,入会林野の利用権の集中・分散が現れ,入会地の分割(割山)が行われる。その動きは早くは18世紀後半期にはみられるが,大きな流れとしては明治中期以後である。…

※「割山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android