入会権(読み)イリアイケン

デジタル大辞泉 「入会権」の意味・読み・例文・類語

いりあい‐けん〔いりあひ‐〕【入会権】

一定の山林原野または漁場に対して、特定地域に居住する住民が、平等に利用、収益しうる慣習法上の権利

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精選版 日本国語大辞典 「入会権」の意味・読み・例文・類語

いりあい‐けんいりあひ‥【入会権】

  1. 〘 名詞 〙 住民が一定の入会山野、漁場に入り、共同で木や草を刈ったり漁をしたりすることができる慣習上の権利。民法で保護されている。共有性質を有するものと、共有の性質を有しない地役権的なものとがある。〔民法(明治二九年)(1896)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「入会権」の意味・わかりやすい解説

入会権
いりあいけん

郷村,村落の住民が共同して山野あるいは水面に立入り,薪炭牧草などを採取する権利。この種の行為は,上代から行われていたが,それが入会,入相,入合などの名称を得たのは,室町末期であり,江戸期にいたって全国的に制度化された。入会地が自村内の土地の場合,他村の土地の場合,第三者の私有地の場合,官有地の場合によって,村中入会,他村入会,私有地入会,官有地入会の4種に分けられる。また,一定の土地に数村が入会う,数村入会というものもあった。入会についての諸規則は,慣行,あるいは「村極」によって決定され,住民の持分なども,これによって定まるものとされていた。しかし入会できる権利は近代の所有権の性質と調和しない点,および日本民法の規定が十分でなかった点で従来議論を呼んできた。さらに日本の農村社会の急激な変化は,この問題を一層複雑なものにした。民法では入会権を共有の性質をもつもの (263条) と,もたないもの (294条) とに分けている。前者については共有の,後者については地役権の民法におけるそれぞれの規定を準用するべきものとするのが日本の現行民法の扱いである (263,294条) 。

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世界大百科事典(旧版)内の入会権の言及

【入会】より

…一定地域(1部落ないし数部落)の住民が,その集団の規制にしたがって,山林原野その他の土地を共同して利用し収益する慣行をいう。民法では物権の一つとして入会権を認めており,その生成の沿革は古く,また,その態様は多岐にわたっている。
[入会権の法的意義]
 入会権は,入会集団の構成員が山林原野その他の土地において,草・落葉・薪炭材・建築材などの採取,牛馬の放牧,植林,ときには石材・貝殻などの採取を入会集団の規制にしたがって行う民法上の物権である。…

【小繫事件】より

…岩手県二戸郡一戸町小繫で1917年から66年まで50年にわたって争われた入会(いりあい)権の存否をめぐる一連の裁判をいう。小繫の30戸余りの住民は,江戸時代以来周囲の山林に立ち入って,まぐさ,薪炭材,建築材などを採取し,生活を支えてきた。…

【不動産登記】より

… 不動産登記法が規定する登記しうる権利は,所有権,地上権,永小作権,地役権,先取特権,質権,抵当権(根(ね)抵当権を含む),賃借権および採石権の9種である(1条)。占有権,留置権は,占有という外形的事実が伴っていることから,登記をもって公示する必要がなく,入会(いりあい)権は,その内容が各地方の慣習によって定められ,その実体関係は一様でないため,登記によって公示することは事実上不可能であるなどの理由により,これらの権利は登記することができないものとされている。また,買戻(かいもどし)権については売買による所有権移転の登記と同時にする場合に限り登記することができ(民法581条,不動産登記法37条),不動産登記法1条に掲げた権利およびその権利に関する請求権については仮登記をすることが認められている(2条)。…

※「入会権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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