軽重(読み)けいじゅう

精選版 日本国語大辞典 「軽重」の意味・読み・例文・類語

けい‐じゅう ‥ヂュウ【軽重】

〘名〙 (「じゅう」は「重」の慣用音)
① 物の重量の軽いことと重いこと。けいちょう。
※俳諧・本朝文選(1706)三・賦類・旅賦〈許六〉「馬士(まご)駕籠舁(かごかき)は、軽重に日月を送り」
物事価値程度大小。けいちょう。
※将門記(940頃か)「罪に軽重なくして」
福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉品行家風「私に九人の子供があるが、其九人の中に軽重(ケイヂウ)愛憎と云ふことは真実一寸ともない」 〔書経‐呂刑
音声高低抑揚(よくよう)
悉曇蔵(880)五「承和之末正法師来。初習洛陽、中聴大原、終学長安。声勢太奇。四声之半、各有軽重。平有軽重、軽亦軽重、軽之重者、金怒声也。上有軽重。軽似合金声平軽上軽、始平終上呼之。重似金声上重、不突呼之。去有軽重。重長、軽短。入有軽重。重低、軽昂」
史記抄(1477)一〇「土地のかわりめに依て音の清濁軽重ありと見へたり」
④ (━する) 比較して軽さ重さを計ること。けいちょう。
※日本開化小史(1877‐82)〈田口卯吉〉四「平家物語等と軽重し難しと雖ども」
⑤ (━する) 大なり小なりの影響を及ぼすこと。なんらかの影響を与えること。物事を左右すること。けいちょう。
※福翁百話(1897)〈福沢諭吉〉一二「況んや我恵与の物とて誠に些細にして嚢中を軽重(ケイヂウ)するにも非ざるに於てをや」
[補注](1)現在は漢音で「けいちょう」と読むのが普通であるが、室町時代以前の資料では「きょうじゅう」と読まれているものが多い。
(2)(③について) 韻学では、清音で始まる音を「軽」として高く始まり、濁音で始まる音を「重」として低く始まるとしていた。

けい‐ちょう【軽重】

〘名〙 (「ちょう」は「重」の漢音)
野分(1907)〈夏目漱石〉一「大小の区別のつく、軽重(ケイチョウ)の等差を知る」
③ (━する) =けいじゅう(軽重)
④ (━する) =けいじゅう(軽重)
※土(1910)〈長塚節〉二四「彼の一身の有無は少しも村落の為には軽重(ケイチョウ)する処がなかった」

きょう‐じゅう キャウヂュウ【軽重】

〘名〙 軽いか重いかということ。主に罪の重さなど、抽象的な事柄についていう。けいじゅう。けいちょう。
※続日本紀‐和銅七年(714)六月癸未「大赦天下、〈略〉罪無軽重

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デジタル大辞泉 「軽重」の意味・読み・例文・類語

けい‐ちょう【軽重】

重量の軽いことと重いこと。また、その度合い。重さ。目方。けいじゅう。「品物の軽重を問わず料金は同一」
価値や程度の小さいことと大きいこと。また、その度合い。けいじゅう。「人の命に軽重はない」
軽んずることと重んずること。また、その度合い。けいじゅう。「軽重の差をつける」「かなえ軽重を問う」

けい‐じゅう〔‐ヂユウ〕【軽重】

けいちょう(軽重)」に同じ。
「其九人の中に―愛憎と云うことは真実一寸ともない」〈福沢福翁自伝
音声の高低。抑揚。日本古来の韻学では、清音で始まる音を「軽」、濁音で始まる音を「重」とし、前者は高く始まり、後者は低く始まるとしている。きょうじゅう。

きょう‐じゅう〔キヤウヂユウ〕【軽重】

けいちょう(軽重)」に同じ。
頸械くびかせ手杻てかせを入れられ、罪の―をただすらんも」〈太平記・二〉

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普及版 字通 「軽重」の読み・字形・画数・意味

【軽重】けいちよう・けいじゆう(ぢゆう)

高下をはかる。尊卑。めかた。金銭。物価。〔史記、平準書論賛〕齊の桓、管仲の謀を用ひ、輕重の(臨機の運用)をじ、山の業を徼(もと)め、以て侯をせしめ、區區たる齊を以て、名を顯す。

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