安倍首相退陣(読み)あべしゅしょうたいじん

知恵蔵 「安倍首相退陣」の解説

安倍首相退陣

2006年秋に、党内の圧倒的支持で首相となった安倍晋三だが、当初より、気心の知れた仲間を重用する「お友だち内閣」体質が批判され、07年になってから、そのお友だち閣僚失言スキャンダルが噴出した。まず1月に柳沢伯夫厚生労働大臣が、少子化問題に関連して「女性は産む機械」と発言し、党内の女性議員からも批判が続出した。6月に長崎県選出の久間章生防衛大臣が「戦争終結のために原爆投下はしょうがなかった」と発言し、後に辞任した。3月には松岡利勝農林水産大臣が、自身の議員会館内事務所の光熱費問題に関連して05年に年間500万円余を計上していた件で、高価な「ナントカ還元水」を使っていたとの答弁顰蹙(ひんしゅく)をかい、それもあってか5月に自殺した。その後任の赤城徳彦大臣も、同じく事務所経費問題で疑惑を持たれ、また、その渦中に大きな絆創膏(ばんそうこう)を顔に貼って記者会見に臨んだ際に、記者から絆創膏の理由を問われるもあいまいに返答したことで、その「隠蔽(いんぺい)姿勢」に不信感を持たれ、こちらも2カ月足らずで辞任に追い込まれた。こうした閣僚の相次ぐ不祥事・失言もあって、自民党は7月の参院選で歴史的大敗となり、民主党に参院第1党の座を譲った。 それでも安倍首相は退陣せず、続投意向を示したが、9月の所信表明演説直後に体調不良を理由に辞任し、福田康夫・元官房長官が後任の首相に選出された。この福田内閣は「背水の陣内閣」と呼ばれ、組閣の際には、金銭がらみも含めたスキャンダルの有無などを綿密にチェックする「身体検査」なる言葉も登場した。

(稲増龍夫 法政大学教授 / 2008年)

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