皇代記(読み)こうだいき

改訂新版 世界大百科事典 「皇代記」の意味・わかりやすい解説

皇代記 (こうだいき)

天皇一代ごとに主要事項を列挙した年代記。日本の年代記は多くこの形態をとっているが,〈皇代記〉あるいは〈年代記〉を書名とするものには同名異書が多い。そのうち一般によく知られているのは《群書類従》所収の《皇代記》である。同書は最初に天神7代,地神5代を掲げ,ついで神武天皇より後円融天皇の1380年まで,一代ごとに記事を列記している。後宇多天皇の在位中(1274-87)に一応成立し,以後数次にわたって書き継がれたものである。宮内庁書陵部所蔵の鴨脚本《皇代記》は,神代12代についで神武天皇より称光天皇までを収め,次に〈南帝〉と標記して後醍醐・後村上・長慶3代を掲げる。記事は簡略であるが,南朝に関する独特の記載があるので珍重されている。また東京国立博物館および天理図書館が分蔵する《年代記》各1巻は,〈皇代記〉とも称し,平安末期~鎌倉初期の書写にかかり,両者併せて村上天皇より崇徳天皇に至る14代の皇代記であるが,《続群書類従》所収《十三代要略》の祖本である。そのほか鎌倉末期の古写本の伝存する《一代要記》をはじめ,洞院公賢の書写増補に成る《皇代暦(歴代抄・歴代皇紀)》や《皇代略》《皇年代略記》など,多くの皇代記が南北朝室町時代に作られたが,後光厳天皇ころ成立した30巻にのぼる《歴代編年集成(帝王編年記)》は皇代記の一代集成ともいうべきものである。
年代記
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世界大百科事典(旧版)内の皇代記の言及

【年代記】より

…また《宋史》日本伝には,983年(永観1)渡宋した東大寺の僧奝然(ちようねん)が〈王年代紀〉1巻を宋朝に献上したことが見え,その内容をかなり詳しく紹介している。日本の年代記の多くは天皇1代ごとに事項を掲記する形をとっているので,〈皇代記〉ないしそれに類する書名をもつが,同名異書も少なくない。 平安末~鎌倉期の古写を伝えるものを挙げると,宮内庁書陵部蔵柳原本《年代記》,東京国立博物館および天理図書館所蔵《年代記(皇代記)》,京都御所東山文庫所蔵《一代要記》などがある。…

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