背・叛(読み)そむく

精選版 日本国語大辞典 「背・叛」の意味・読み・例文・類語

そ‐む・く【背・叛】

[1] 〘自カ五(四)〙 (「背(そ)向く」の意) ある方向に背を向ける。⇔おもむく
後ろ向きになる。背中を向ける。反対方向やわきを向く。
※竹取(9C末‐10C初)「かへるさのみゆき物憂く思ほえてそむきてとまるかくや姫ゆゑ」
② 人や物から離れる。別れる。去る。
万葉(8C後)二・一九六「朝宮を 忘れ給ふや 夕宮を 背(そむき)たまふや」
③ (世をそむくの意で) 俗世間を離れる。出家する。隠遁する。
※伊勢物語(10C前)一〇二「そむくとて雲にはのらぬ物なれど世のうきことぞよそになるてふ」
④ 人の思いや意見・命令などに反する。また、期待に反する結果となる。また、道理・常識などに合致しない。さからう。反対する。
※万葉(8C後)五・七九四「にほ鳥の 二人並び居(ゐ) 語らひし 心曾牟企(ソムキ)て 家離(ざか)りいます」
平家(13C前)五「すでにこの京を他国へうつさんとせさせ給ひしを、大臣公卿、諸国の人民そむき申ししかば」
味方であった者、主人などに敵対する。手むかいする。謀叛(むほん)する。
書紀(720)垂仁五年一〇月「皇后〈略〉曲(つばびらか)に兄王(このかみのおほきみ)の反状(ソムクコト)を申したまふ」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒そむける(背)

そ‐むき【背・叛】

〘名〙 (動詞「そむく(背)」の連用形名詞化)
① うしろの方。背面。後面。
夫木(1310頃)二三「なきすみのふなせを過て今みればそむきにかすむあはの島山藤原光俊〉」
② 反対すること。また、敵対すること。謀叛(むほん)。〔倭語類解(17C後‐18C初)〕
俗世にそむくこと。出家すること。遁世(とんせい)
源氏(1001‐14頃)鈴虫「多うは思ひなり給ひにし御世のそむきなれば」

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