鶏合(読み)にわとりあわせ

精選版 日本国語大辞典 「鶏合」の意味・読み・例文・類語

にわとり‐あわせ にはとりあはせ【鶏合】

〘名〙 鶏を戦わせて観賞する物合(ものあわせ)一種中国、唐の玄宗皇帝が好み、清明の節に鶏を戦わせた故事により、日本では三月三日に行なったという。宮中から民間に波及して広く行なわれた。とりあわせ。闘鶏。〔塵袋(1264‐88頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「鶏合」の意味・わかりやすい解説

鶏合 (とりあわせ)

雄鶏をつがえて闘わせる遊戯。闘鶏。中国では古く周代からあり,所伝では唐の玄宗が乙酉の年の生れゆえに闘鶏を好み,また闘鶏を行ってのち間もなく位についたため,治鶏坊を建て鶏を闘わせたという。日本では,《日本書紀》雄略天皇紀に雄鶏を闘わせた記事が見えるから,中国文化の伝来とともにすでに奈良時代以前から行われていたことが知られるが,遊戯として流行をみたのは平安時代以降であり,物合の一種として発達をみた。他の物合の多くは,物品和歌を添えるという特殊な素養を要したのに対して,単に鶏を闘わせてこれを観覧する鶏合は,武士庶民階級にも広く親しまれた。鎌倉・室町時代では鶏合は朝廷幕府における3月上巳の節供遊興の一つとして楽しまれていたほどである。江戸時代でもシャモ(軍鶏)を闘わせることが民衆娯楽として行われていたが,賭博類似の行為を生じやすかったため,幕府はしばしば禁令を発していた。
闘鶏
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世界大百科事典(旧版)内の鶏合の言及

【闘鶏】より

…宋・元以後,しだいに衰微した。 日本では平安期にまず宮廷貴族の間で鶏合(とりあわせ)と称して好まれた。記録にも残っている有名な鶏合がいくつかあり,また紀州田辺には闘鶏神社があるほどである。…

【物合】より

…清少納言は《枕草子》の〈うれしきもの〉の条に〈物合,なにくれといどむことに勝ちたる,いかでかはうれしからざらむ〉と記している。種類も多方面にわたり,近世まで含めると,(1)植物では,草合,根合(ショウブの根),花合(主として桜),紅梅合,瞿麦(なでしこ)合,女郎花(おみなえし)合,菊合,紅葉合,前栽(せんざい)合など,(2)動物では,鶏(とり)合,小鳥合,鶯合,鵯(ひよどり)合,鶉(うずら)合,鳩合,虫合,蜘蛛合,犬合,牛合など,(3)文学では,歌合,詩合,物語合,絵合,扇紙(扇絵)合,今様(いまよう)合,懸想文(けそうぶみ)合,連歌合,狂歌合,発句合など,(4)文具・器物では,草紙合,扇合,小筥(こばこ)合,琵琶合,貝合,石合など,(5)武技・遊芸では,小弓合,乱碁合,謎謎合,薫物(たきもの)合,名香(みようごう)合など,(6)衣類では,小袖合,手拭合など,が行われている。物合は隣接する歌合にも風流,装飾などの面で影響を与え,純粋歌合のほかに物合的要素を採り入れた歌合も多い。…

※「鶏合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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