μ spin resonanceの略称.正の電荷をもつミューオン μ+ の偏極した磁気モーメントの緩和,あるいは磁場による回転,あるいは共鳴をいう.正負のミューオン μ± は,それぞれ短寿命(26 ns)の π± 中間子の崩壊から生じるが,負のミューオン μ- は物質中に入ると重い電子のように作用し,電子とカスケード的に入れかわりながら原子核に近づき,最後には原子核に吸収されて短時間のうちに消滅する.それゆえ,μSRが対象とするのは,もっぱら正のミューオン μ+ である.μ+ は平均寿命2.2 μs で
e+μνe
に崩壊する.それゆえ,放出される e+ を検出することによって,その存在を認識することができる.π+ の崩壊で生じる μ+ は放射される方向に偏極した1/2のスピンをもち,それによる磁気モーメントは,陽子の磁気モーメントの約3.2倍である.放射される μ+ は反磁性物質中ではスピンの偏極を残したまま減速し,それから崩壊するが,崩壊そのものも異方的なので,二つの e+ 検出器を μ+ が到達する物体の前後に配置すると,図(a)のような2本の減衰曲線を観測することができる.実際の測定では μ+ 粒子1個ずつについて入射信号をスタートとして崩壊するまでの時間を測る.およそ 106 個のデータを自動的に蓄積して減衰曲線がつくられる.この測定系に磁場を加えると,磁気モーメントが歳差運動を起こすので,崩壊の異方性が回転し,図(b)のように減衰曲線が振動する.このようなデータを集めることによって,μ+ と物質との相互作用を調べることができる.これがμSRの測定原理である.さらに μ+ は,最終的には媒体中で,電子を捕獲してミュオニウムMuになる(μ+ のまま崩壊するか,Muになってから崩壊するかは媒体に依存する)が,質量は陽子のほぼ1/9なので,質量の軽い水素原子としてふるまう.Muに対する磁場の影響は,電子の磁気モーメントが μ+ の磁気モーメントよりはるかに大きいので,観測される歳差運動は e- によるもので μ+ だけによるものとはまったく違ってくる.ミュオニウムに対する磁気共鳴をμSRと区別してMSRとよぶことがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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