ギリシア神話の女怪。複数形はゴルゴネスといい,海の神フォルキュスPhorkysの娘ステンノSthennō(強い女),エウリュアレEuryalē(広く跳ぶ女),メドゥーサMedousa(統治する女)の3姉妹を総称する。このうち前2者には特別の神話がないため,ゴルゴンといえばただちにメドゥーサを指すことが多い。彼女たちは無数の蛇から成る頭髪,猪のきばのごとき歯,見る者を石に化す目をもつ恐るべき存在で,はるかな西方,ヘスペリデスの園の近くとされるそのすみかは,彼女たちの年上の3姉妹,生まれながらの老女で,しかも3人で一眼一歯を共有するグライアイGraiaiによって守られていた。このため,ゴルゴンの首を取ってくることを命じられた英雄ペルセウスは,まずグライアイから目を奪ってゴルゴンたちのすみかへの道を聞き出したあと,その目を直視して石化させられないように,鏡に映る姿をたよりに睡眠中の彼女たちに近づき,3姉妹のうちでただひとり不死身ではなかったメドゥーサの首を切り落とした。このとき,海神ポセイドンのたねを宿していたメドゥーサの血から,有翼の天馬ペガソスが生まれた。またメドゥーサの首はのちに女神アテナのアイギス(ヤギ皮楯)の飾りとなったという。メドゥーサの首は女怪の死後もその魔力をもつと一般に信じられた結果,ゴルゴンの頭(ゴルゴネイオンと呼ばれる)が護符として武器や壁に取り付けられ,アルゴスではアゴラの地下に埋められていたと伝えられる。
執筆者:水谷 智洋
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(1)ギリシア神話の怪物。フォルキスとケトの3人の娘ステンノ、エウリアレ、メドゥサをいう。いずれも醜怪な顔を有し、蛇の髪、猪(いのしし)の牙(きば)、青銅の手、黄金の翼をもち、目にはその顔を見た者を石に化す魔力があった。3人のうちメドゥサだけが不死ではなかったため、ペルセウスに首を切り落とされたとき、そこから天馬ペガソスとクリサオルとが生まれたが、これは彼女とポセイドンとの愛の結晶とされる。メドゥサの首はアテネの盾の飾りとなり、またその血はアスクレピオスによって、生命をよみがえらす薬であると同時に生命を奪う毒としても使用された。一般にゴルゴンの頭は、守護の印としてしばしば武具、城壁などに描かれた。
(2)エジプトという地名の起源となりまた50人の息子をもったことでも有名なアイギプトスの、妻の1人。
[丹下和彦]
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…ゼウスは敵に対して実際には右手で雷霆(らいてい)を投げる天空神であり,アイギスは左手に振りかざす〈雷雲〉の象徴と解釈される。怪物ゴルゴンの首と黄金の総(ふさ)で飾られ,ときにはアテナおよびアポロンに貸し与えられた。この語が造形美術では,もっぱらアテナの外衣として用いられる。…
…困惑した王は娘と孫を箱に入れて海に流すと,箱はセリフォス島に漂着し,2人は島の王ポリュデクテスPolydektēsの弟に保護された。その後,ダナエに恋したポリュデクテスは成人したペルセウスを亡きものにしようと考え,見る者を石に化す女怪ゴルゴンの首を取ってくるようにと彼に命じた。しかし彼はヘルメスとアテナの2神に導かれて,まずゴルゴン三姉妹の姉で,3人で1眼1歯を共有するグライアイのところへ行き,その眼を奪ってゴルゴンの居場所を聞き出すとともに,空を飛ぶサンダル,姿の見えなくなる帽子などを入手,ついで空を飛んではるかな西方のゴルゴンのすみかに赴き,三姉妹のうちただひとり不死身ではなかったメドゥーサの首を,青銅の盾に映る姿を見ながら,切り取った。…
※「ゴルゴン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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