改訂新版 世界大百科事典 の解説
アオムシサムライコマユバチ
Apanteles glomeratus
アオムシコマユバチとも呼ばれる。膜翅目コマユバチ科に属する昆虫。寄生バチの1種で,体長3mm前後,全体黒色。雌は若い青虫の体内に産卵し,孵化(ふか)した幼虫はそのまま寄主の体内で摂食しながら成長する。青虫が十分成長したころ,ハチの幼虫も成熟し,寄主の体壁や環節の継目などをかみ破って外に出て繭を紡ぎ,さなぎになり,やがて羽化する。1匹の青虫に数個から数十個の卵が産みつけられるが,幼虫はそろって成長し,互いの間で争うことはない。卵が産みつけられてから,春秋なら約25日,盛夏なら15日前後で成虫が現れ,年間数回の世代を繰り返す。昔からモンシロチョウの重要な天敵として知られ,モンシロチョウが北アメリカやニュージーランドなど新しい土地に侵入し大害を与えた際,このハチが天敵として人工的に導入されたこともある。日本でも,圃場(ほじよう)で採集したモンシロチョウの幼虫を飼育していると,ときには80%以上がこのハチに寄生されていることがある。ヨーロッパから日本全国にわたって広く分布している。
執筆者:桃井 節也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報