モンシロチョウ(読み)もんしろちょう(英語表記)small white

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンシロチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンシロチョウ
もんしろちょう / 紋白蝶
small white
small cabbage white
[学] Pieris rapae

昆虫綱鱗翅(りんし)目シロチョウ科に属するチョウ。北海道より南西諸島にわたり全国的に分布する普通種で、アゲハナミアゲハ)とともに一般にもっともよく知られたチョウである。奄美(あまみ)諸島以南の南西諸島にはもともと生息しなかったもので、これがすみついたのは比較的近年のことである。国外ではユーラシア大陸の暖帯から寒帯に広く分布するが、亜熱帯から熱帯的な気候の地にはほとんど生息しない。現在、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドにも定着したが、これはヨーロッパから二次的に侵入したもので、本来土着のものではない。台湾には1960年ごろに侵入し、土着のタイワンモンシロチョウよりも普通種となった。はねの開張45~65ミリメートル程度。はねの地色白色、数個の黒紋がある。和名は「紋のあるシロチョウ」の意で、「紋の白いチョウ」の意ではない。雌のはねの表面は若干の黒い鱗粉を装い、雄に比べてやや色が暗い。寒冷地で年に2~3回、九州あたりの暖地では6~7回の発生を繰り返す。

 幼虫の食草はアブラナ科キャベツダイコンなどの栽培種野生種のほとんどすべてが食草となるが、とくにキャベツを好み、その被害がひどい。俗に「アオムシ」とよばれるのはモンシロチョウの幼虫である。アブラナ科以外のフウチョウソウ科セイヨウフウチョウソウ、ハリフウチョウソウ、ギョボク)、ノウゼンハレン科(ノウゼンハレン)に幼虫がつくことがある。蛹(さなぎ)の状態で冬を越すのが常態であるが、暖地では幼虫で越冬する場合もある。

白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンシロチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンシロチョウ
Pieris rapae; European cabbage butterfly

鱗翅目シロチョウ科。前翅長 30mm内外。翅の地色は白色。前翅表先端部は黒色で,このほかに黒色紋が2個ある。後翅は前縁部に小黒色紋があり,裏面は黄色を帯びる。一般に雌は雄より黒色部が明瞭で,前翅基部は黒みを帯びる。成虫は年数回出現する。幼虫はアブラナ科の栽培種の害虫で,特にキャベツを好む。世界各地に広く分布するが,人為的に広がった地域も少なくない。ヨーロッパ,北アメリカに産するものが原亜種で,日本に産するものは亜種 P. r. crucivoraという。近縁のタイワンモンシロチョウ P. canidiaは本種に似るが,後翅外縁の翅脈端に黒色斑があるので区別できる。タイワンモンシロチョウは,中央アジア,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,中国,台湾,朝鮮などに分布し,日本では対馬と八重山諸島にのみ産する。 (→シロチョウ )

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