改訂新版 世界大百科事典 「アゲハモドキ」の意味・わかりやすい解説
アゲハモドキ (擬鳳蝶)
Epicopeia hainesii
鱗翅目アゲハモドキガ科の昆虫。アゲハチョウ科の一部と翅の形が非常によく似て,後翅に尾状突起をもち,昼間活動するガ。主として東南アジアの熱帯から亜熱帯に分布するアゲハモドキガ科は,小さな科で5~6種しか知られていない。体液は食虫性の哺乳類や鳥類の好まない味らしく,彼らから敬遠されることによって生命の安全が保証されているようである。同じ地域に混生している外見上類似したアゲハチョウと擬態関係にあると推定されているが,この点における生態学的な研究観察は行われていない。日本には,アゲハモドキただ1種だけが知られ,クロアゲハやジャコウアゲハに似ている。アゲハモドキは開張6cm内外。北海道から九州まで全国的に分布し,昼間飛ぶが,灯火にも飛来する。幼虫はミズキ,クマノミズキなどミズキ科の葉を食べる。体は白蠟物質で覆われ,表面のものは糸のように細く突出し,触れると脱落して飛び散る。さなぎの繭も同じ物質に覆われている。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報