ミズキ(読み)みずき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ
みずき / 水木
[学] Cornus controversa Hemsl.

ミズキ科(APG分類:ミズキ科)の落葉高木。高さ18メートル、径60センチメートルに達する。幹は灰褐色、小枝は緑色。葉は広卵形から楕円(だえん)形で、長さ5~15センチメートル、全縁。花は5~7月、枝の先から出た散房花序につき、白色。核果は球形で径6~7ミリメートルで、黒く熟す。山地に普通に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国、台湾、インドシナ、ヒマラヤに分布する。根から吸い上げた水分を上昇させる力(根圧)が強く、春に幹を伐(き)ると樹液が流れ出すのでミズキの名がある。材は白色で加工が容易であるため、こけしの材料としたり、盆や椀(わん)の木地杓子(しゃくし)、箸(はし)、玩具(がんぐ)などに用いられる。

 ミズキ属は約40種からなり、北半球の温帯を中心に分布する。

[門田裕一 2021年3月22日]

文化史

長野県や新潟県などでは棟上げ時の火除(ひよ)けの儀式に使われる。東北から中部地方にかけて正月の「若木迎え」に用い、小正月(こしょうがつ)にミズキの小枝に繭玉(まゆだま)や小団子を刺し、神棚に飾り、五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。そのため、マイダマノキとかダンゴノキともよばれる。アイヌは木幣(イナウと称する)とし、キハダに次ぐ重要な神の木であった。サケはかならずミズキの棒で、クナウ・コル(木幣を持て)と唱え頭をたたいて殺した。サケはそのイナウを土産(みやげ)に天国に帰ると信じられたのである(『分類アイヌ語辞典』)。これらのことから、ミズキの認識は古くからあったと思われるが、古書にはほとんどみられない。『和漢三才図会(ずえ)』(1713)に美豆木(みずき)の名が載るが、これはマンサク科のヒュウガミズキである。

[湯浅浩史 2021年3月22日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ(水木)
ミズキ
Cornus controversa; dogwood

ミズキ科の落葉高木で,クルマミズキともいう。アジア東部の温帯に広く分布し,日本では各地の山地や雑木林中に普通に生える。高さは 10m以上になり,樹皮は汚灰色で,枝を輪状に出し横に広がる。葉は長柄をもつ広卵形ないし広楕円形で長さ8~12cm,互生する。葉の上面は緑色,下面は白色を帯び6~8対の葉脈が著しく隆起する。ルーぺで見ると脈上にT字形の特徴ある毛がある。5月頃,小枝の先に径 10cmほどの散房花序をなして白色の小花を多数つける。萼筒は小さく,毛が密生し,花弁は4枚で開出する。おしべは4本で1本のめしべがある。果実は球形の核果で黒く熟する。材は白く緻密でしかも加工が容易なため,工芸材や木鉢によく使われ,東北地方のこけし人形の材としても有名である。ごく近縁の別種にクマノミズキ C. brachypodaがあり,葉が対生することと花期がやや遅れる点で異なる。

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