ミズキ(その他表記)Cornus controversa Hemsley

改訂新版 世界大百科事典 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ
Cornus controversa Hemsley

谷すじの二次林に多いミズキ科の落葉高木。いわゆる柳箸の材料はこの種である。和名は〈水木〉の意で,春先に枝を折ると多量の樹液をしたたらすことによる。生長はきわめて早く,側枝は車輪状に広がる。幼枝は無毛で緑色,時に帯紅色,老木になると樹皮は浅い溝状を呈する。葉は互生,長柄があり広卵形で緑色,下面は粉白色で短い圧毛をつける。初夏,当年枝に頂生する散房花序に,多数の小さな花をつける。花は4数性,萼筒に白色の圧毛がある。子房下位。核果(実)は球形,暗紫色に熟し,ヒヨドリが好んで集まる。日本全域,朝鮮,中国大陸からヒマラヤに広く分布する。時に庭園樹,街路樹に用いる。材は白色,やや軟質で細工しやすく,特に東北地方のこけし木地として賞用される。分布域をほぼ同じくする近縁種に,クマノミズキC.macrophylla Wall.がある。葉が対生し,花期がミズキより約1ヵ月遅い。染色体数もn=11で,ミズキ(n=10)と異なる。

双子葉植物。アオキヤマボウシを含み,10ないし15属,約115種がある。この科の起源は古く,白亜紀中期(約1億年前)の地層から化石が発見されている。高木または低木が大部分で,まれに木本性つる植物や草本も含む。葉は対生または互生,単葉で托葉がない。花は両性,まれに単性,小型で花弁4~5枚,おしべもこれと同数で交互に配列する。頂生する花序は多様で集散花序から散形花序,頭状花序へと一連の変化の方向性が認められ,往々総苞片に囲まれる。多くの種は蜜腺が花盤上にあり,一般に虫媒花と考えられている。子房は下位,1~4室,果実は核果。子房下位で心皮数が少ないことからウコギ科に近縁とされたり,材の性質からスイカズラ科に近いとされている。ほとんどは北半球の温帯域に分布し,少数種が熱帯や南半球に分布する。

 多くの種類が花木,庭木として賞用される。アオキサンシュユは薬用植物として知られ,食用となるものもある。材は建築材,器具材,彫刻材,薪炭材などに利用されるものがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ
みずき / 水木
[学] Cornus controversa Hemsl.

ミズキ科(APG分類:ミズキ科)の落葉高木。高さ18メートル、径60センチメートルに達する。幹は灰褐色、小枝は緑色。葉は広卵形から楕円(だえん)形で、長さ5~15センチメートル、全縁。花は5~7月、枝の先から出た散房花序につき、白色。核果は球形で径6~7ミリメートルで、黒く熟す。山地に普通に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国、台湾、インドシナ、ヒマラヤに分布する。根から吸い上げた水分を上昇させる力(根圧)が強く、春に幹を伐(き)ると樹液が流れ出すのでミズキの名がある。材は白色で加工が容易であるため、こけしの材料としたり、盆や椀(わん)の木地、杓子(しゃくし)、箸(はし)、玩具(がんぐ)などに用いられる。

 ミズキ属は約40種からなり、北半球の温帯を中心に分布する。

[門田裕一 2021年3月22日]

文化史

長野県や新潟県などでは棟上げ時の火除(ひよ)けの儀式に使われる。東北から中部地方にかけて正月の「若木迎え」に用い、小正月(こしょうがつ)にミズキの小枝に繭玉(まゆだま)や小団子を刺し、神棚に飾り、五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。そのため、マイダマノキとかダンゴノキともよばれる。アイヌは木幣(イナウと称する)とし、キハダに次ぐ重要な神の木であった。サケはかならずミズキの棒で、クナウ・コル(木幣を持て)と唱え頭をたたいて殺した。サケはそのイナウを土産(みやげ)に天国に帰ると信じられたのである(『分類アイヌ語辞典』)。これらのことから、ミズキの認識は古くからあったと思われるが、古書にはほとんどみられない。『和漢三才図会(ずえ)』(1713)に美豆木(みずき)の名が載るが、これはマンサク科のヒュウガミズキである。

[湯浅浩史 2021年3月22日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ(水木)
ミズキ
Cornus controversa; dogwood

ミズキ科の落葉高木で,クルマミズキともいう。アジア東部の温帯に広く分布し,日本では各地の山地や雑木林中に普通に生える。高さは 10m以上になり,樹皮は汚灰色で,枝を輪状に出し横に広がる。葉は長柄をもつ広卵形ないし広楕円形で長さ8~12cm,互生する。葉の上面は緑色,下面は白色を帯び6~8対の葉脈が著しく隆起する。ルーぺで見ると脈上にT字形の特徴ある毛がある。5月頃,小枝の先に径 10cmほどの散房花序をなして白色の小花を多数つける。萼筒は小さく,毛が密生し,花弁は4枚で開出する。おしべは4本で1本のめしべがある。果実は球形の核果で黒く熟する。材は白く緻密でしかも加工が容易なため,工芸材や木鉢によく使われ,東北地方のこけし人形の材としても有名である。ごく近縁の別種にクマノミズキ C. brachypodaがあり,葉が対生することと花期がやや遅れる点で異なる。

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百科事典マイペディア 「ミズキ」の意味・わかりやすい解説

ミズキ

ミズキ科の落葉高木。北海道〜九州,東アジアの山地に広くはえる。枝は水平に広がって独得な樹形を示す。葉は互生し,広楕円形で先はとがり,弓形に曲がった7〜10対の側脈があって,裏面は白い。5〜6月,新枝の先に白色4弁の小花を多数,散房状に開く。果実は球形で秋に青黒色に熟す。材は柔らかく,器具,細工物,下駄などとされる。本州〜九州の山地にはえるクマノミズキは,葉が対生し,卵状楕円形。花は1ヵ月ほど遅く,ふつう6〜7月に開き,果実は紫黒色に熟す。

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世界大百科事典(旧版)内のミズキの言及

【シラキ(白木)】より

…和名のもととなった白い材は,細工物や薪炭材とする。材が白いのでシラキと呼ばれる樹木には,ドロノキ,アカメガシワコシアブラミズキなどがある。【森田 竜義】。…

※「ミズキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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