日本大百科全書(ニッポニカ) 「アサヒダイ」の意味・わかりやすい解説
アサヒダイ
あさひだい / 旭鯛
red pandora
[学] Pagellus bellottii
硬骨魚綱スズキ目タイ科ヨーロッパダイ亜科に属する海水魚。ジブラルタル海峡からアンゴラ、地中海、カナリア諸島など、東大西洋の大陸棚や沿岸域に分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で側扁(そくへん)するが、マダイよりも細長い。両顎(りょうがく)の前部に、上顎では4本ほど、下顎では5本前後の弱い犬歯状円錐歯(えんすいし)があり、側歯と連続する。両顎の側部には弱小な2列の臼歯(きゅうし)があり、その前方に4~5本の円錐歯が並ぶ。眼隔域(左右の目の間隔域)の鱗(うろこ)は中央部よりやや前方に達する。臀(しり)びれ軟条が10本あることがこの魚の特徴である。最大の体長は42センチメートルに達する。体は美しい桃赤色で、小青色点が散在する。おもに水深100メートル以浅の砂底や岩底に群れで生息する。雑食性であるが肉食性が強く、甲殻類、頭足類、小形魚類、ナメクジウオ類、多毛類などを優先して摂取する。雌性先熟型の雌雄同体魚。産卵は2歳魚から行われ、集団で岸近くに移動する。産卵期は緯度によって変わるが5月~11月の間。1960年(昭和35)ごろからアフリカ北西岸において日本の大型底引網船が大量に漁獲し、一時は日本の中・小形の冷凍タイはこのアサヒダイで代用されたほどであった。現在は体長も小形化の傾向で、入荷量も少ない。商品名をサクラダイとすることがあるが、サクラダイの和名は、すでにハナダイ科の魚に使用されているため、この名は適当ではない。近縁の魚に同海域から知られているニシキダイP. erythrinusがある。本属のタイは日本にはいない。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年7月19日]