アトラスオオカブトムシ(その他表記)Atlas beetle
Chalcosoma atlas

改訂新版 世界大百科事典 「アトラスオオカブトムシ」の意味・わかりやすい解説

アトラスオオカブトムシ
Atlas beetle
Chalcosoma atlas

甲虫目コガネムシ科の昆虫。雄は体長が10cmにも達し,黒緑色から黒銅色で強い光沢がある。また頭部には上方へ湾曲する大きな1本の角,胸部には前方中央に小さな1本の角と,後方左右に内方へ湾曲する1対の大きな角があるが,これらの角の大きさは個体によって大小がある。雌は体長5.5cmで雄ほど光沢がない。雌雄ともに脚のつめとげはするどく樹上生活に適していて樹液に集まる。インド,東南アジアの森林に広く分布する。Chalcosoma属に含まれる種としては,コーカサスオオカブトムシC.caucasusボルネオオオカブトムシC.moellenkampiが知られている。いずれもアトラスオオカブトムシに似た角をもち,体も大きい。コーカサスオオカブトムシはインドシナ半島,マレー半島スマトラ島,ジャワ島,ボルネオ島に分布し,ボルネオオオカブトムシはボルネオ島にのみ分布。これらの幼虫腐植土を食べて成育し,卵から成虫までの期間は1年以内と考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アトラスオオカブトムシ」の意味・わかりやすい解説

アトラスオオカブトムシ
あとらすおおかぶとむし
atlas beetle
[学] Chalcosoma atlas

昆虫綱甲虫目コガネムシ科カブトムシ亜科に属する昆虫。インド、ミャンマービルマ)、インドネシア、フィリピン、マレーシアに広く分布する。体長6センチメートル内外であるが、頭の中央部と前胸部の両側から前方に出る長い角(つの)を含めると10センチメートルに達し、アジア産で最大のカブトムシである。雄の胸背面は暗緑色や銅色などの光沢を帯びる。成虫は昼間は樹陰などに隠れていて夜間に活動し、花蜜(かみつ)やつぼみ、樹液などを食べ、灯火にも飛来する。幼虫は朽ち木中にすむ。なお、インドネシアには近似種のコーカサスオオカブトC. caucasusとモーレンカンプオオカブトC. moellenkampiの2種が分布する。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アトラスオオカブトムシ」の意味・わかりやすい解説

アトラスオオカブトムシ
Chalcosoma atlas; atlas beetle

甲虫目カブトムシ科。東南アジアにみられる代表的なカブトムシ。雄がもつ角の奇観でよく知られる。体長は,雄は角を含め 10cm内外で,より大きくなる個体もあり,雌は 5cm内外。雄は,頭部から上方に彎曲する長い角,前胸背の中央前端から短い角が出るほか,左右の前縁角から先鋭で長大な角がやや内方に彎曲しながら前方に突き出ている。体は光沢のある黒色で,肢部脛節の先端には鋭い彎曲歯をもつ。胸部,腹部とも分厚く,重量感をあたえる。雌は日本のカブトムシとよく似ていて,巨大な角はない。昼間は樹洞や落葉下に隠れ,夕方から活動し,花蜜や樹液を吸う。飛翔の際の「ぶーん」という音は大きい。スンダ列島を含め,インドからフィリピンまでの間に分布する。

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