アラビナン(読み)あらびなん(その他表記)arabinan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラビナン」の意味・わかりやすい解説

アラビナン
あらびなん
arabinan

アラビノース単糖の一種)が脱水結合(脱水縮合)してできた多糖アラバンarabanともいう。一般に単糖が多数(10以上)脱水結合してできた多糖をグリカンglycanと総称し、アラビナンはグリカンの一種である。アラビナンを形成するアラビノースはアルドペントースアルデヒド基をもつ五炭糖)の一種で、アルドペントースはアルデヒド基(-CHO、この炭素を1番目とする)と4番目の炭素についたヒドロキシ基-OHが分子内反応をすると5員環(炭素四つと酸素一つからなる)を形成する。この環状構造の糖を一般にフランという化合物にちなんでフラノースと総称する(環状構造になる前の構造を鎖状構造という)。5員環構造のアラビノースをアラビフラノースとよぶ。鎖状構造のアルデヒド基の炭素(不斉炭素ではない)は環状構造では不斉炭素となるため2種類の異性体ができる。これらをα(アルファ)、β(ベータ)と区別する。また、一方のフラノースの1番目の炭素についたヒドロキシ基が、他方の5番目の炭素についたヒドロキシ基と脱水結合する場合を1→5結合といい、3番目の炭素についたヒドロキシ基と脱水結合する場合を1→3結合という。

 植物由来でよく知られているアラビナンはα-L-アラビフラノースがα-1→5結合して主鎖をつくり、この3番目の炭素に側鎖としてα-L-アラビフラノースがα-1→3結合した構造をしている()。ガラクタン(単糖の一種であるD-ガラクトースが脱水結合してできた多糖)などとともにペクチン質の一成分となっている。ラッカセイリンゴテンサイなどから分離されている。多糖の一般的性質とは異なり、70%エタノールやわずかに水を含むピリジン可溶。広く微生物、植物界に存在するα-L-アラビノフラノシドアラビノフラノヒドロラーゼα-L-arabinofuranoside arabinofuranohydrolaseにより分解される。

[徳久幸子]


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栄養・生化学辞典 「アラビナン」の解説

アラビナン

 →アラバン

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