4種の異なる原子または基と結合している炭素原子。通常下に示す式aのようにC*で表す。
アミノ酸や糖のほか,天然有機化合物の多くは不斉炭素原子をもつ。有機化合物における旋光性や光学活性が不斉炭素原子によることは1874年,J.H.ファント・ホフとJ.A.ル・ベルによって提案された。しかし不斉炭素原子の存在は,光学活性の必要条件でも十分条件でもない。不斉炭素原子を欠きながら光学活性を示す化合物があり,その例としてファント・ホフが予言したアレン誘導体は1935年に実際に合成された。不斉炭素原子を2個以上もつ化合物のなかには光学活性を示さないものもある。メソ酒石酸(式b)は不斉炭素原子を2個もちながら分子内の対称性のため光学不活性である。トリヒドロキシグルタル酸の異性体(式c)の中央の炭素原子は一見不斉炭素原子(H,OH,立体配置の異なる二つのCH(OH)COOH基)のように見えるが,分子に対称面があるため光学不活性となる。この現象を擬不斉,この種の不斉炭素原子を擬不斉炭素原子という。
→光学異性
執筆者:竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
単結合4本で共有結合している炭素原子の結合相手の原子あるいは原子団すべてが異なるとき、その炭素原子が不斉炭素原子である。不斉は不整とも書く。このとき、不斉炭素原子を中心とする原子配置には、互いに重ね合わせても一致することのない実像と鏡像の関係にある2種が可能となり、その1対を対掌体antipodeあるいは鏡像体enantiomerまたはエナンチオマーという。不斉はキラリティーに基づいており、第2種の対称要素(転義回転軸)がないときの原子配置には、つねに1対の対掌体が可能となり、特殊な条件でない限り、光学異性体の対になる。炭素原子に限らず、一般に不斉の中心になる原子を不斉原子という。
[岩本振武]
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有機化合物中のCが4個の異なる原子または原子団と結合して,キラルな四面体構造の中心にあるとき,このCを不斉炭素原子という.不斉炭素原子のまわりの立体配置の違う一対の異性体を対掌体という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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