日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アルコール健康障害対策基本法
あるこーるけんこうしょうがいたいさくきほんほう
飲酒が引き起こすさまざまな問題に総合的に対処することを定めた法律(平成25年法律第109号)。アルコール健康障害の発生や進行および再発防止を図り、あわせてアルコール健康障害を有する者を支援し、飲酒が原因となる家庭内暴力および虐待や自殺、飲酒運転などのアルコール関連問題を解決する目的で2013年(平成25)12月に公布された。「アルコール健康障害」とは、アルコール依存症のほか、多量の飲酒、20歳未満の者や妊婦の飲酒など、不適切な飲酒の影響による障害をさす。これまで飲酒に関連する法律は規制に重点が置かれたものが多かったが、この法律ではアルコール健康障害に対する具体的な対策を講じることにまで踏み込み、国や地方公共団体、酒造関連業者、国民などが果たすべき責務を明示した点に特徴がある。また、施策の開始期限を定めている点でも従来のものと異なる。国に対しては、対策を総合的に策定し実施すること、地方公共団体に対しては、国との連携を図りつつその地域の状況に応じた施策を策定し実施することを義務づけている。また、両者はさらに教育の振興、知識の普及、不適切な飲酒の誘引の防止に努め、健康診断・保健指導、医療の充実、飲酒運転者への指導などのために必要な施策を講ずるべきとされた。酒類の製造・販売および提供業者に対しては、障害の発生や進行および再発の防止に配慮するよう努めることを、国民に対しては、アルコール関連問題に関する関心と理解を深め、障害の予防に必要な注意をはらうよう努めることを求めている。さらにこれらの施策について、法律施行後5年をめどに施行状況について検討を加えることも定められた。このほか、国民の間に広くアルコール関連問題に関する関心と理解を深めるため、毎年11月10日から16日までを「アルコール関連問題啓発週間」として、理念にそった活動を行うことも定められた。
[編集部]