改訂新版 世界大百科事典 「アルチプラノ」の意味・わかりやすい解説
アルチプラノ
Altiplano
ペルー南部,南緯15°付近からボリビアをへて,チリ,アルゼンチン,ボリビア3国国境(南緯23°付近)まで続くアンデス山脈中の高原。幅150~250km。標高3500~4500m。海成の古生層およびそれを貫く花コウ岩よりなるオリエンタル山脈と,火山岩からなるオクシデンタル山脈に挟まれて分布する構造性盆地(凹陥地)である。北部には淡水のチチカカ湖があり,それから流れ出すデサグアデーロ川は出口のない塩湖ポーポ湖に注ぐ。ポーポ湖の南にはサラール・デ・コイパサ,サラール・デ・ウユニ塩原と呼ばれる大きな塩原(サラール)がある。これらの塩湖,塩原は面積5万km2(湖面標高3756m,水深100m)ほどの氷河期湖のなごりである。この湖は気候の温暖化により1万4000年ほどまえにすっかり干上がってしまった。アルチプラノ上の凹地はこのような湖成層や氷河成堆積物,河成堆積物,あるいは火砕流堆積物などで埋められ,極めて平坦な堆積平野となっている。チチカカ湖の周辺は降水量も多く,また気候も温和なため,インディオによる伝統的な農業がさかんであり,人口密度も高い。キノア,ジャガイモ,ソラマメなどが栽培される。しかしアルチプラノの南部は乾燥が著しく,夜間気温の低下もはげしいうえに土壌のアルカリも強すぎるので農耕は不可能となる。羊,ラマなどの放牧が行われるだけであり,人口も希薄である。
ペルー領であるチチカカ湖北岸からボリビアの中部にかけてはアイマラ族が住んでいる。彼らは長い間インカ帝国の支配下にあったが,今でもアイマラ語を話し,独自の文化を継承している。しかしプーノ,グアキ(いずれもチチカカ湖畔),ラ・パス(ボリビアの首都),オルロ(大きな鉱山町)など比較的大きな都市に近く,交通の便もよいので,西欧文化の影響を強く受けており,他のアンデス地域で伝統的な農牧生活を送っている住民より生活程度は高い。
執筆者:野上 道男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報