アルテミシア(読み)あるてみしあ(その他表記)Artemisia Ⅰ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルテミシア」の意味・わかりやすい解説

アルテミシア(1世)
あるてみしあ
Artemisia Ⅰ

紀元前5世紀初めのハリカルナッソスの女僭主(せんしゅ)。ペルシアに服属しながら、夫の死後ハリカルナッソスを中心にカリア地方を支配した。ギリシア侵攻を目ざすクセルクセス大王従軍サラミス沖で海戦を企てた大王を止めようとしたが聞き入れられなかった。しかし海戦(前480)では大活躍し、大王は「わが軍の男はみな女となり、女が男になった」といったと伝えられている。のち一少年を恋慕したがかなわず、彼の目をつぶし、自分は投身自殺したといわれているが、真偽はさだかでない。

[真下英信]


アルテミシア(2世)
あるてみしあ

マウソロス

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アルテミシア」の意味・わかりやすい解説

アルテミシア
Artemisia

小アジアのカリア地方ハリカルナッソスの支配者リュグダミスの娘。前6~前5世紀の人だが生没年は不詳。夫の死後,成人に達した息子があったにもかかわらず,自ら独裁権を継承して,コス,ニシュロス,カリュムノスなど近隣島々をも支配した。ペルシア宗主権に服する僭主としてクセルクセス1世(大王)のギリシア遠征(前480)に軍船5隻を率いて従軍し,サラミスの海戦では女性ながら大奮戦し,大王の退却に際しては的確な助言を与えた。なお同名の人物でマウソレウムを建設した女性も有名。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアルテミシアの言及

【ニガヨモギ】より

…苦みがあるのでニガヨモギの和名がついた。【小山 博滋】
[伝説]
 ニガヨモギの属名は小アジアのカリアの王妃アルテミシアにちなむ。夫のマウソロス王の死を悼み,〈世界の七不思議〉の一つに数えられる大霊廟(マウソレウム)を建設した彼女は,亡夫の骨灰をニガヨモギの飲物に混ぜて飲んだという。…

【ヨモギ(艾∥蓬)】より

…【飯島 吉晴】
[ヨーロッパ]
 北ヨーロッパの伝承によれば,ヨモギは強い磁力をもち,つねに葉を北へ向けている不思議な草と信じられ,水晶占いや呪術(じゆじゆつ)に用いられたほか,リウマチ,不妊,悪寒などに効果のある薬草の一つに数えられた。この草がとくに婦人病に効くのは,女神アルテミスの聖草であったからだといわれ,属名アルテミシアもこれに由来する。大プリニウスは毒虫や毒薬を防ぐ力があると述べ,これを持って旅をすれば疲れないという俗信もある。…

【エストラゴン】より

…中央アジアからシベリアに至る地域に広く分布するキク科ヨモギ属の多年草。エスカルゴを用いたフランスの料理によく用いられ,サラダやオムレツ,グラタンやソースなどの香辛料にも使用するため,ヨーロッパでは栽培されている。estragonはフランス語由来,英語ではまたタラゴンtarragonともいう。茎は直立し,高さ40~120cm,根茎は長く横にはう。茎葉は線状披針形,長さ3~7cm,幅2~8mmで,無柄。…

【マウソロス】より

…内紛状態にあった当時のペルシア帝国の地方総督として,彼はほとんど独立の地位を持ち,アケメネス朝に反抗をも試み,ギリシア植民市からギリシア本土の政治にも影響を及ぼした。ギリシア文化の保護者として知られ,生前から,また彼の死後は妹であり妻であるアルテミシアArtemisiaにより,首都ハリカルナッソスにギリシア人の芸術家,技術者を集めて壮麗な廟が建てられ,世界の七不思議のひとつとなった。以後ローマ皇帝の廟,大規模な廟一般をマウソレウム(マウソレイオン)と呼ぶのはこれによる。…

※「アルテミシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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