デジタル大辞泉
「こす」の意味・読み・例文・類語
こす[助動]
[助動][こせ|○|こす|○|○|こせ(こそ)]《上代語》動詞の連用形に付く。他に対してあつらえ望む意を表す。…てほしい。
「我ゆ後生まれむ人は我がごとく恋する道に会ひこすなゆめ」〈万・二三七五〉
[補説]語源については、「おこ(遣)す」の音変化、カ変動詞「こ(来)」にサ変動詞「す」が付いたとみるなど、諸説がある。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
こす
〘助動〙 (活用は「こせ・〇・こす・〇・〇・こそ(こせ)」
上代の特殊活用。動詞の連用形に付いて) 相手の動作、状態が自分に利益を与えたり、影響を及ぼしたりすることを望む意を表わす。「…してくれ」「…してほしい」という、相手に対する
希求、命令表現に用いられる。
※
古事記(712)上・
歌謡「うれたくも 鳴くなる鳥か この鳥も 打ち止め許世
(コセ)ね」
※伊勢物語(10C前)四五「ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは
秋風吹くと雁につげこせ」
[語誌](1)語源に関しては、(イ)寄こす意の下二段動詞「おこす」のオが脱落した、(ロ)カ変動詞「こ(来)」にサ変動詞「す」が付いた、(ハ)「く(来)」の他動詞形、などの説がある。また、
命令形「こそ」を、
係助詞「こそ」の一用法とする説もある。
(2)活用の種類についても、サ変の古活用の
未然形「そ」を認めてサ変動詞とする説、下二段型とする説に分かれる。
(3)未然形「こせ」は、「こせね」「こせぬかも」のように、希求を表わす
助詞などとともに用いられ、終止形「こす」は、「こすな」のように、禁止の
終助詞「な」とともに用いられる。命令形「こそ」は最も多く見られる
活用形で、これを独立させて終助詞とする説もある。
(4)平安時代以降、命令形に「こせ」の形が見られるようになる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報