日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガゼル」の意味・わかりやすい解説
ガゼル
がぜる
gazelle
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科ガゼル属に含まれる動物の総称。この属Gazellaのアンテロープ(レイヨウ)は、アフリカだけでなくアラビア半島、シリア、アフガニスタン、イラン、パキスタン、インド、チベット北部およびモンゴルまで広く分布する。生息地も変化に富み、サバナから荒れ地や砂漠まであり、十数種が知られている。体は細く優美で、四肢も細く長い。通常は砂色の体色で、多くは顔や体側に暗色帯がある。雌雄ともに角(つの)があり、横からみると始め後方に曲がり、先のほうはわずかに前方あるいは上方に曲がり、前方からみると竪琴(たてごと)形である。角の長さは種によって異なる。いずれの種も乾燥した地域に適応し、水がなくても長期間生存できる。夕刻または早朝に、普通は草を食べるものが多いが、砂漠地帯にすむものは小低木の葉なども食べる。単独で生活するもの、2頭から30頭ほどの小群でいるもの、あるいは大群をなすものなど、その生活様式はいろいろである。普通、子は草などの植物が多い4~6月に産まれる。1産1子。寿命は10~12年ほどである。体は小さいが走るのは速く、時速64~96キロメートルに達するといわれ、ジャンプも巧みである。ガゼル類は次の三つのグループに分けられる。
(1)体は大形で、臀部(でんぶ)の白色部が大きく、尾の付け根だけでなく、腰の後部にまで達するグループ。グラントガゼルG. granti(肩高80~100センチメートル、角長30~80センチメートル、東アフリカの草原に分布)、ダマガゼルG. dama(ガゼル類中最大で肩高90~120センチメートル、角長16~41センチメートル、アフリカ西部から北部の砂漠に分布)など。
(2)体は中形ないし小形で、臀部の白斑(はくはん)は小さく、尾の付け根までしかないグループ。ドルカスガゼルG. dorcas(肩高50~70センチメートル、角長16~38センチメートル、アフリカ北東部から中近東の砂漠に分布)、トムソンガゼルG. thomsoni(肩高55~70センチメートル、角長7~43センチメートル、東アフリカの草原に分布)など。
(3)中形で白斑は前者と同じであるが、普通は雌に角がないグループ。このグループはコウジョウセンガゼルG. subgutturosaだけで、雄ののどは繁殖期に膨れる。肩高60~80センチメートル、角長25~43センチメートル。モンゴルからアフガニスタンの平原に分布する。
[今泉忠明]