改訂新版 世界大百科事典 「ニルガイ」の意味・わかりやすい解説
ニルガイ
nilgai
Boselaphus tragocamelus
インドとパキスタンにすむ大型のアンテロープ。偶蹄目ウシ科の哺乳類。草原にもすむがふつう森林に多く見られる。前半身がよく発達し,肩の位置が腰よりも高く,雄にのみ短い角がある。雌雄とも首にたてがみがあり,体色は,雄は暗褐色,雌は茶褐色。あごの下の頸部(けいぶ)に半月状の白斑がある。体長180~210cm,尾長46~54cm,体重は,最高270kg前後になる。20頭くらいまでの小さな群れをつくって昼間活動し,草木の葉,果実を食べる。雄は6~10月の交尾期に,互いに闘ってなわばりをつくり,2~10頭の雌を取りこむ。雌は,妊娠期間245~277日で,1産1~2子を生んだ後,まもなく交尾する。貧弱な角が,ハンターから好まれなかったことと,ヒンドゥー教徒からウシに次ぐ聖獣とされたことが幸いして,インドでは人を恐れず,もっとも数の多い大型野生草食獣となっている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報