アントラセン油(読み)あんとらせんゆ(英語表記)anthracene oil

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アントラセン油」の意味・わかりやすい解説

アントラセン油
あんとらせんゆ
anthracene oil

コールタールを蒸留して300~360℃の範囲で得られる留分。タール全量に対する収率は約10~20%程度である。蛍光を発し黄緑色を呈するので緑油(りょくゆ)ともよばれる。比重1.075以上(15.5℃)。5~10%のアントラセンのほかカルバゾールフェナントレンなどを含有する。冷却すると常温でアントラセンなどを析出する。これをアントラセンケーキといい、アントラセン、カルバゾールなどの原料となる。遠心分離などによりアントラセン、カルバゾールなどを回収した残りの油はクレオソート油として、木材防腐剤、燃料などに用いられる。日本では、2004年(平成16)にジベンゾ-a,h-アントラセン、ベンゾ-a-アントラセン、ベンゾ-a-ピレンが「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で有害物質に指定されたために、家庭用防腐剤に含まれるこれらの物質の濃度を 10ppm 以下にするように定められた。クレオソート油はこれらの化合物を含有するのでこの規制が適用され、さらにこれらの防腐剤で処理した防腐・防虫木材についても含有濃度の規制ができた。クレオソート油の使用はEU(ヨーロッパ連合)でも規制されている。

[廣田 穰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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