イオン打込み(読み)いおんうちこみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオン打込み」の意味・わかりやすい解説

イオン打込み
いおんうちこみ

加速されたイオンを材料中に打ち込むことにより、材料の性質を変化させる方法。イオン注入ともいう。半導体工業では、不純物イオンを直接半導体に打ち込むことで抵抗率を変化させているが、これをpn接合や、MOSダイオードを主体とした集積回路などに用いて大きな成功を収めている。すなわち、所定の不純物を半導体に導入することを不純物ドーピングといい、その方法として、イオン打込みのほか、不純物熱拡散法、不純物を含んだ半導体層を気相または液相から基板上に成長させる方法などがある。イオン打込みは、そのいずれよりも制御性の点で特長をもっている。たとえばシリコン半導体では、n形不純物イオンとしてリンイオンP+やヒ素イオンAs+、p形不純物イオンとしてホウ素イオンB+やアルミニウムイオンAl+が用いられ、加速電圧は数キロ~数百キロボルトである。

 このように、イオン種、イオン電流と加速電圧を指定すると、半導体への不純物ドープ量と深さ分布を精密に制御できるなど、きわめて優れた方法である。このため、とくにシリコン集積回路の製造には欠かすことのできないものとなっている。最近では、半導体への不純物ドーピングのほかに、磁性材料金属材料誘電材料など、ほかの材料にも利用されている。

[齊藤 忠]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android