誘電材料(読み)ゆうでんざいりょう(その他表記)dielectric material

改訂新版 世界大百科事典 「誘電材料」の意味・わかりやすい解説

誘電材料 (ゆうでんざいりょう)
dielectric material

二つの電極の間に電荷を蓄える素子コンデンサーというが,この電極間に絶縁体をはさみ電圧をかけると,生じた電場のために絶縁体の原子の電荷分布が配向して,電場の正の側には正電荷が,負の側には負電荷が出現する。その結果,電極間が真空の場合よりも絶縁体が入ったほうが蓄積できる電荷の量がε倍だけ増大する。これを誘電分極現象といい,εを比誘電率と呼ぶ。絶縁体はすべて誘電体であるということができる。

 実際のコンデンサーに使用されている誘電体を誘電材料というが,この材料は,高分子薄膜,油,セラミックスに大別することができる。高分子膜はεが5以下とあまり大きくないが,損失,ひずみが小さく,安定性もよいので,きわめて優れたコンデンサーを得ることができる。形状が大きくなるのが欠点である。紙,ポリエステルポリプロピレンポリカーボネート,ポリスチロール,テフロンが代表的なものである。油もεが小さい欠点があるが,高分子膜と組み合わせることにより大型のコンデンサーを作ることが可能であり,コロナ放電を生じにくい特性をもつことから,主として高耐圧の大型コンデンサーに使用されている。セラミックスとしては雲母マイカ),アルミナAl2O3酸化タンタル酸化チタンチタン酸バリウムチタン酸ストロンチウムなどが広く使われている。雲母は高分子膜と同様な長所をもつうえ,εが7.2とかなり大きく,しかも高周波特性が優れているので,大容量のものは作製できない欠点はあるものの,高周波用として広く使われている。アルミナ,酸化タンタルアルミニウム,タンタルの表面に化成法によりこれらの酸化物の薄膜を生成させて使用される。このコンデンサーは電極を電解液に漬けて使用されるので有極性であり,漏洩ろうえい)電流が多く安定性も悪いが,きわめて大容量のコンデンサーを実現することができるので主として電源用に使用されている。タンタルは高価であるがアルミニウムよりもはるかに信頼性の高い酸化皮膜が得られるので,比較的小型少容量の電解コンデンサーに使われている。酸化チタン,チタン酸バリウム,チタン酸ストロンチウムを使用したコンデンサーは,一般にセラミックスコンデンサーと呼ばれている。酸化チタンはεが100程度とそれほど大きくはないが,組成によってεの温度係数を自由に制御できるうえに安定なので,温度補償用コンデンサーとして使用される。チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムは作製法によってはεを非常に大きくできる。とくに前者は3000ものεを実現できるので小型大容量のコンデンサーを作ることができ大量に使用されている。チタン酸バリウムなどを半導体化しその結晶粒界のみを絶縁体とした半導体コンデンサーは,耐圧は低いものの見かけのεが10万にも達し非常に大容量のものが得られるので,電源バイパスコンデンサーとして重用されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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