いとど[名]
カマドウマの古名。《季 秋》「海士(あま)の屋は小海老(こえび)にまじる―かな/芭蕉」
いとど[副]
[副]《副詞「いと」の重なった「いといと」の音変化という》
1 程度が以前よりもはなはだしいさま。いっそう。いよいよ。
「夕されば―干(ひ)がたきわが袖に秋の露さへ置き添はりつつ」〈古今・恋一〉
2 ただでさえ…なのにさらに。
「―鈍なやつめが茗荷(めうが)を食ひ、いよいよ鈍になって」〈狂言記・鈍根草〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
いとど
昆虫カマドウマの別名。羽根がないので鳴かない。江戸時代、コオロギの一種とみなされた。エビコオロギ。 [季] 秋。 《 海士の屋は小海老にまじる-かな /芭蕉 》
いとど
( 副 )
〔「いといと」の転という〕
① いよいよ。一層。ますます。 「 -ゆかしさまされど/更級」
② ただでさえ…なのにさらに。そうでなくてさえ。 「 -鈍な奴めが茗荷を食ひ、いよいよ鈍になつて/狂言記・鈍根草」
出典 三省堂大辞林 第三版について 情報
いとど
※俳諧・
毛吹草(1638)二「八月〈略〉いとと こうろぎ かまきり」
いとど
〘副〙 (副詞「いと」の重なった「いといと」が変化したもの)
① 程度が更にはなはだしいさま。ますます。いよいよ。ひとしお。一段と。
※古今(905‐914)雑下・九七一「年をへてすみこしさとをいでていなばいとど深草野とやなりなむ〈
在原業平〉」
※
滑稽本・
浮世風呂(1809‐13)三「側
(はた)から附智恵がございますから、いとどおしゃべりになります」
② 事態がいっそうひどいことへの否定的な感情を表わす語。その上さらに(…のような事さえ加わり)。ただでさえ…なのにさらに。これ以上(…でありたくない)。
※大鏡(12C前)一「これは四十たりの子にて、いとど五月にさえむまれてむつかしきなり」
[
語誌](1)「いといと」が一般に
形容詞や
形容動詞を修飾するのに対して、「いとど」は動詞を修飾する機能を持つ。また「いとど」は中古の
和歌に用例が多く見られ、雅語的な性格を有するが、「いといと」は和歌には用いられない。
(2)中世以降、「だに」「さへ」などの添加を示す助詞を伴なった用法が見られるようになる。一方、独立した形容詞としての「いとどし」を派生した。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報