日本大百科全書(ニッポニカ) 「カマドウマ」の意味・わかりやすい解説
カマドウマ
かまどうま / 竈馬
camel cricket
昆虫綱直翅(ちょくし)目カマドウマ科の昆虫の総称、またはそのうちの1種。カマドウマ類は直翅目のなかでもまったくはねがなく、体長はおよそ10~25ミリメートルで、体は太くて短く干したエビのように曲がり、はねを失った補償として後肢(こうし)が長大となり、それに応じて触角も長く発達している。直翅目のなかではコロギス類に類縁が近く、コオロギ類とキリギリス類を結ぶ中間的存在であり、はねがないため、これらのように発音することもなく、また前肢に鼓膜(こまく)ももたない。肢(あし)の跗節(ふせつ)は4節で縦に平たい。腹端にはやや長めの尾角があり、雌では上方に反った剣状の産卵管をもつ。夜行性で、昼間は暗い所を好み、洞窟(どうくつ)もかっこうのすみかになっている。多くは群がってじっとしており、夜になると餌(えさ)を求めて出歩く。雑食性であるが、動物質を好んで食べる。カマドウマの名は、昔、人家に侵入したものが台所のかまど近くでよくみられたことと、姿や跳びはねるさまがウマを連想させるところから出た。日本には約10種のカマドウマ類が知られている。本州から九州に分布するカマドウマDiestrammena apicalisは、体長15ミリメートル内外、全体褐色の種で、人家や石灰洞などに普通。マダラカマドウマD. japanicaは黒と白のまだら模様のある大形種で、日本全土にみられる。クラズミウマTachycines asynamorusは薄いまだら模様があって、前種より小形で、人家の内外にすんでいる。山地の林内にはコノシタウマT. elegantissimusがいる。そのほかの種は、おおむね石灰洞にみいだされ、洞窟動物として扱われている。
[山崎柄根]