改訂新版 世界大百科事典 「イヌザンショウ」の意味・わかりやすい解説
イヌザンショウ
Zanthoxylum schinifolium Sieb.et Zucc.
山野に自生するミカン科の落葉低木で全体に毛がない。外観はサンショウに似ているが,臭気があり,小枝のとげは対生でなく1本ずつ離れてつくので区別できる。葉は互生し,奇数羽状複葉。小葉は13~21個,対生またはやや対生し,紙質で披針形または長楕円状披針形,長さ1.5~3.5cm,ふちには小さい鋸歯がある。葉の羽軸には狭い翼がある。雌雄異株。夏,枝先に長さ3~8cmの散房花序を出し,多数の帯緑色の小花をつける。花は単性で5数性。果実は長さ4mmでやや球形の袋果で,先端に短い突起があり,紫紅色に熟し,うちに黒色で光沢のある種子を有する。日本(本州,四国,九州),朝鮮,中国に分布する。果実を民間薬とする。本種に似て落葉高木となり,枝に太いとげをもち,葉は長さ30~80cmに達するカラスザンショウZ.ailanthoides Sieb.et Zucc.は日本(小笠原,本州,四国,九州,南西諸島),台湾,中国に分布する。二次林に多く,材はげた材となる。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報