日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
インダストリアル・ダイナミックス
いんだすとりあるだいなみっくす
industrial dynamics
企業の環境適応行動を情報フィードバック・システムとしてとらえ、シミュレーションによって行動変容を解明しようとする理論および手法をいう。もっとも有名なものはフォレスターJ. W. Forresterの開発したもので、単にインダストリアル・ダイナミックスというとき、フォレスターのものをいうことが多い。IDと略称したり、システム・ダイナミックスsystem dynamics(略称SD)とよぶこともある。
企業の数理的意志決定手法としては、OR(オペレーションズ・リサーチ)など多くのものがあるが、それらのほとんどは所与の条件下での最適解を求めるものであり、条件が変化し、変化した条件が伝達される時間のことは考慮の外に置かれている。IDはこの欠陥を克服しようとするものである。フォレスターのIDでは、システムの構造、方針の変更、情報・決定・行動における時間的遅れが相互に作用して、システムの状態および状態間の変化の大きさが時間的にどのように推移するかをシミュレーションによって追求する。そこで用いられる特別な言語が、ダイナモDYNAMOとよばれるものである。
[森本三男]