日本大百科全書(ニッポニカ) 「インド洋まぐろ類委員会」の意味・わかりやすい解説
インド洋まぐろ類委員会
いんどようまぐろるいいいんかい
Indian Ocean Tuna Commission
インド洋を回遊するマグロ類の資源管理と持続的利用を目的とする国際機関(地域漁業管理機関)。略称IOTC。1996年に発効した「インド洋まぐろ類委員会設立協定Agreement for the Establishment of the Indian Ocean Tuna Commission」に基づき、国連食糧農業機関(FAO)の下部機関として同年に発足した。日本の加盟(条約発効)は1996年(平成8)。事務局はセイシェルのビクトリア。ソマリア沖での海賊活動が沈静化した2012年以降、インド洋のマグロ類は乱獲・過剰漁獲状態が続いており、インド洋でのメバチ、キハダ、カツオ、カジキ類などの科学的調査を行い、国別の漁獲上限の設定、洋上人工浮遊物で魚を1か所に集める集魚装置の使用制限、違法・無報告・無規制(IUU)漁船情報の公開、マグロ類輸入国が漁船(非加盟国含む)から漁獲海域・量などを示す統計証明書を回収する制度の導入、海鳥やウミガメなどの混獲対策などを実施している。インド洋が主要漁場である高級食材のミナミマグロについては、別機関の「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」が所管しているため、対象外。2022年3月時点の条約締約(加盟)国等は、日本、インド、インドネシア、オーストラリア、中国、韓国、セイシェル、スリランカなど30で、加盟沿岸国の過半を途上国が占める。小型漁業の多い途上国や島嶼(とうしょ)国には、漁獲上限の緩和措置がとられている。インド洋のマグロ漁における一大勢力である台湾は、IOTCが国連機関であるため加盟しておらず、インド洋でのマグロ漁獲量が多いスペインも未加盟である。なお、マグロ類は広い海域を回遊するため、世界にはIOTCやCCSBTはじめ、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT(アイキャット))の5国際機関がある。
[矢野 武 2022年6月22日]