マグロ条約(読み)まぐろじょうやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグロ条約」の意味・わかりやすい解説

マグロ条約
まぐろじょうやく

日本が締約国となっている多国間条約で、とくにマグロに関するものとして「大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約」(大西洋まぐろ条約)、「全米熱帯まぐろ類委員会の設置に関するアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約」(全米熱帯まぐろ類委員会設置条約)、「みなみまぐろの保存のための条約」(みなみまぐろ保存条約)、「インド洋まぐろ類委員会の設置に関する協定」(インド洋まぐろ類委員会設置協定)、「西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約」(中西部太平洋まぐろ類条約)がある。「マグロ条約」はこれらの条約・協定の総称である。

 大西洋まぐろ条約は、国連食糧農業機関FAO)の作成した草案に基づき1966年にリオ・デ・ジャネイロで開かれた会議で採択。1969年に発効した。大西洋およびその接続海域(地中海など)におけるマグロ類資源を、最大の持続的漁獲を可能にする水準に維持することを目的とし、そのために、調査研究、規制措置の勧告を行う大西洋まぐろ類保存国際委員会がこの条約に基づき設置されている。この条約の下では、年間漁獲枠が制限されるなど規制が強化されている。

 全米熱帯まぐろ類委員会設置条約は、1949年にアメリカとコスタリカの間で署名。1950年発効。日本は1970年(昭和45)に加入した。この条約に基づき、全米熱帯まぐろ類委員会により、東太平洋海域におけるマグロ類の調査、規制措置の勧告が行われており、この条約の下でも規制が強まっている。なお、2003年には現行条約では対応が不十分であるとして、新条約「1949年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約」(アンティグア条約、日本での略称「全米熱帯まぐろ類委員会強化条約」)が採択され、2010年に発効した。

 みなみまぐろ保存条約は、インド洋南部水域に分布するミナミマグロの保存のために1993年(平成5)に、日本、オーストラリア、ニュージーランド間で署名された(1994年発効)。みなみまぐろ保存委員会が情報収集、条約の解釈・実施、保存管理措置の審議、漁獲割当量の決定などを行っている。漁獲割当および日本の調査漁獲をめぐって、1998年から日本とオーストラリア・ニュージーランドとの間で紛争が生じている。

 インド洋まぐろ類委員会設置協定は、1993年に国連食糧農業機関の枠内で採択された(1996年発効)。委員会の任務は、インド洋のマグロ類に関する情報の収集、研究開発活動、保存管理措置の採択などである。

 中西部太平洋まぐろ類条約は2000年にハワイのホノルルで採択、2004年発効、日本は2005年に加盟。中部・西部太平洋でのマグロ類の漁獲規制が行われている。

[水上千之]

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