政治分析(読み)せいじぶんせき(その他表記)political analysis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「政治分析」の意味・わかりやすい解説

政治分析
せいじぶんせき
political analysis

政治的行為およびそれから発生する政治現象、政治問題などをその部分・要素に分解し、部分・要素間の関係、部分・要素と全体との関係などを明らかにし、研究対象の本質を認識、解明することを、一般に政治分析と称している。たとえば、政党を分析する場合、現代政治学においては、〔1〕政党の発生様式(発生基盤、発生契機)、〔2〕政党組織・構造、〔3〕政党の機能、〔4〕政党間の相互作用(政党制、政権構成)などの次元に分けて研究し、政党行動に関するなんらかの法則性を明らかにしようとする。

[谷藤悦史]

政治分析の方法

一般に、分析は、いくつかの要素を結び合わせて一つの全体に統一する総合と対置されるが、政治学においては、そうした分析・総合の厳密な定義にかかわりなく、研究対象に関する諸データの体系的な解釈を政治分析と称している。分析に際して、計量ないし測定、説明、分類予測などの作業が行われるが、こうした作業を実施するために分析対象に関連性・有意性のある一定の概念、方法、モデル、アプローチ理論が用いられる。第二次世界大戦以前の政治学では、規範的な哲学的、法学的、制度論的分析が主体であったが、1920年代ころから徐々に勃興(ぼっこう)し、第二次大戦後に隆盛を極めた行動論政治学は、厳密で科学的な政治学の構築を目ざしたことから、記述的で実証的な分析が主流となった。こうした流れのなかで、調査票を用いて面接アンケートなどを行いデータを収集するフィールド・リサーチ、収集されたデータを統計的に処理し法則性などを明らかにする計量アプローチ、数理モデル国家などの政治体の作動存続変動をシステム概念で説明するシステム論アプローチ、政治システムを構成する構造とそれら構造が遂行する機能の視点から政治システムの作動を説明する構造―機能アプローチなど多様な方法、モデル、アプローチが開発され、政治学そのものも細分化された。

[谷藤悦史]

政治分析の対象

さらに、分析の対象についても、現代政治学では、〔1〕政治的パーソナリティーと動機の分析、〔2〕政治意識の形成過程を扱う政治的社会化の分析、〔3〕政治的態度の分析、〔4〕政治意識あるいは世論の分析、〔5〕選挙あるいは投票行動の分析、〔6〕立法行動・司法行動の分析、〔7〕決定作成過程の分析、〔8〕政党および利益集団の分析、〔9〕政治的価値、イデオロギー、信念体系、政治文化の分析、〔10〕政治システムおよびシステム変動の分析など多様な主題を取り上げて分析している。

[谷藤悦史]

『J・C・チャールスワース編、田中靖政・武者小路公秀編・訳『現代政治分析』全三巻(1971・岩波書店)』『O・ヤング著、江川潤訳『現代政治学の方法』(1972・福村出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「政治分析」の意味・わかりやすい解説

政治分析
せいじぶんせき

政治研究のうちでも,単なる歴史的事実の記述や評論であることをこえて,その知識や概念を一般化するべく客観的科学的な手法を用いて行われる研究をさす。経済学・数学・統計学などで確立された手法を応用して政治現象を整理し,比較や測定,分類などが行われる。したがって政治というとりわけ流動的な対象であるにもかかわらず,ほぼ同一の条件下での比較・説明・予測が可能となった。選挙分析,政策分析,システム分析などがその代表例である。

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