翻訳|valve
液体や気体を流す配管の中に組み込み,流れを通したり,止めたり,あるいはその量を調節するために用いられる機器。用途,種類などを表すことばと複合して用いるときは,仕切弁,玉形弁などのように弁と呼ばれる。バルブの内部には,外部から操作できる弁体が組み込まれており,これを弁座に密着させて流れを遮断する。その構造にはさまざまなものがあるが,次のように分類される。
(1)玉形弁 玉形に膨らんだ弁箱の中に隔壁を設け,そこにあけられた円形の弁座に円板状の弁体を垂直に押しつける構造のもの(図a)。閉止したときの気密性がよく,また流れを絞って調節する用途にも適しているので広く使われている。ただし,全開のときは,流れはS字形に曲がりながら通り抜けるため抵抗が大きく,圧力降下が大きい。口径100mm以下の小型弁として使われることが多く,水道用の水栓は,構造的には玉形弁に属している。この場合,弁座に当たる部分にゴムのパッキングがついた弁体を使い,完全水密と補修の便をはかっている。とがった円錐状の弁体をもつものは,ニードル弁と呼ばれ,流量の微細な調節に向く。
(2)仕切弁 円板状の弁体を仕切戸のように流路に押し込んで流れを遮断する構造のもの(図b)。全閉時の気密性もよく,また全開時には弁体にじゃまされることなく流れが直進するので抵抗が小さい利点がある。ただし,弁体を半開の状態で使用すると,背面に激しい乱れが生じて振動やキャビテーションを起こすことがあるので,流量調節用には適さない。このため,常時開または閉で使用する大型弁や高圧弁に多く使われる。
(3)バタフライ弁 円筒形の弁箱の中に流路内径と等しい径をもつ円板状の弁体を入れ,それを直径軸のまわりに回転して開閉を行うもの(図c)。構造が単純で口径に比べて流れ方向の寸法(面間距離)を小さくできる利点がある。全開時の抵抗は比較的小さいが,全閉時に気密性を保つことが構造上むずかしく,主として低圧用や気密性の要求の低い用途に使われる。
(4)ボール弁 流路をくり抜いたボール状の弁体を弁箱の中に入れ,そのボールを直径軸のまわりに90度旋回して流路の開閉を行うもの(図d)。ボールの代りに円錐状のプラグを使うものはコックcockと呼ばれ,ガス栓や化学実験用などに広く使われている。ボール弁,コックは構造が単純な割りに気密性が高く,また90度の回転で開閉が迅速に行える特徴がある。
(5)ダイヤフラム弁 合成ゴムなどで作った膜(ダイヤフラム)を弁体に押しつけて流路をふさぐ構造のもので(図e),気密性は高いが高温,高圧の流体には適さない。流路がダイヤフラムによって完全に外部と遮断されるため,弁箱から内部の流体が漏れだすことを完全に防げ,腐食性や毒性の高い流体を扱う管路に適している。
以上,代表的なバルブの構造を示したが,全閉時の気密性が高いこと,弁体を動かす弁棒が弁箱を貫通するグランド部から外部への漏洩(ろうえい)が少ないこと,弁棒の摩耗が少ないことなどが信頼性の高いバルブの要点である。以下では流路の開閉以外に使われる特殊な用途のバルブについて述べる。
(6)逆止め弁 チェック弁とも呼ばれ,逆流を自動的に防止するために使われる。流す方向へは弁体が流れの力によって自然に押し開かれるが,逆方向に流れようとすると弁体が弁座に密着して流れを遮断する。図fは,ちょうつがいによって支持された円板状の弁体をもつスウィング逆止め弁で,弁体は重力によってつねに閉位置に戻ろうとするが,流れによる押上げ力とつり合った位置に静止する。逆止め弁の組付けに当たって,流れ方向と重力に対する取付け姿勢に注意しなければならない。揚水ポンプには,ポンプ停止時の水の落下を防ぐため,必ず逆止め弁が取り付けられる。
(7)安全弁 一定の圧力以上になると自動的に弁が開いて流体を放出し,圧力が下がると自然に吹き止まるもので,ボイラーなどの高圧容器が過大な内圧によって破壊されることを未然に防ぐために使われる。機器の安全と保護のためにきわめて重要で高い信頼性が要求される。家庭用圧力なべなどにはおもりを用いた簡便な安全弁が使われるが,一般には,図gのように弁体をばねで押える方式が多い。安全弁は,吹出圧が安定していること,吹出しと吹終りの圧力差が小さいこと,吹出しと同時に一気に弁が全開し大量の流体を放出できることなどが重要である。
(8)自動調節弁 流体の流量,圧力,タンクの水位などを自動的に制御するためのもので,弁体を駆動するために空気圧,油圧,電動機などを用い,また弁体の形状も開度・流量特性が適切となるよう用途に応じてくふうされている。
バルブの開閉は手動でもできるが,大型弁や自動弁では駆動機構がつけられている。小型のものにはソレノイドを用いた電磁弁もあるが,電動機あるいは空気圧によるものが多く,操作力がとくに大きいものでは油圧も使われる。バルブが接する流体は,温度や圧力が広い範囲にわたっており,またその腐食性,摩耗性は対象によりさまざまである。したがってバルブ材料の適切な選定がとくに重要である。小口径,低圧用には青銅鋳物,大口径,低圧用には鋳鉄が多いが,高圧,高温になるに応じて鋳鋼,鍛鋼,クロム・モリブデン鋼,ステンレス鋼などの合金鋼が使われる。
執筆者:大橋 秀雄
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…前250年ころバクトリア太守ディオドトスDiodotosが,セレウコス朝の支配から独立,建国したギリシア人王国。首都は現在のアフガニスタン北部のバルフ(古称バクトラBaktra)にあった。なお,バクトリアBaktriaとはヒンドゥークシュ山脈からアム・ダリヤ中流域にかけての地域を指す歴史的呼称で,この地は前4世紀末アレクサンドロス大王の攻略をうけ,大王の死後はセレウコス朝の支配下に置かれた。…
※「バルブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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